E-10 (戦車)

E-10 軽駆逐戦車の概要

E-10は、第二次世界大戦中にドイツで開発が計画された軽駆逐戦車です。この車両は、ドイツ軍が追求した戦車設計の一環として、同時に計画されたEシリーズの一部を成すものであり、複数の戦車で共通の部品を利用することで生産効率を向上させることを目的としていました。

開発の背景

E-10は、E（Entwicklungstypen＝開発タイプ）計画のもとで設計されました。この計画は、戦車の標準化と共通部品を用いることで生産性を向上させることを意図しており、E-100やE-75、E-50、E-25などと同様のコンセプトに基づいています。E-10は、ヘッツァーの後継車両として位置づけられていますが、実際の計画はヘッツァーよりも前にスタートしたもので、このため、元々ヘッツァーという名称が当車両に与えられる予定でした。

本車両の装甲設計は、クレックナー・フンドルト・ドイッツ社のマギルス工場によって行われ、さらにJ・M・ヴォイト社によって流体動力学を用いた駆動装置が開発される予定でした。この駆動装置は、アルタと呼ばれる試作型に搭載される計画でしたが、大戦末期の混乱の中でこの試作型の製造が進められていたものの、最終的には他のプロジェクトに押されてE-10の開発は中断されました。

E-10の構造

E-10の外観は、個性的な箱型の形状を持っています。ドイツ軍が採用していたケースメート様式の戦闘室や機関室が特長であり、車体袖部がなく、滑らかな車体天井が特徴です。このデザインにより、戦闘室と機関室の境界が顕著でなく、設計面での優れた視認性が確保されました。

車体の前面装甲は、ヤークトパンターやヘッツァーと似たように合理的な避弾経始を持つ構造となっており、特に前面上部には60mmの装甲板、下部には30mmの装甲が施されています。操縦手の視界確保のため、ペリスコープは装甲カバーの下に設置されています。一方、車体側面には20mmの装甲板が立てられており、こちらの避弾経始は考慮されていませんでした。

Armament（武装）としては、48口径の75mm対戦車砲（7.5cm Pak39 L/48）が搭載される予定であり、砲は車体右側にオフセットして装備されました。この配置は、先代のヘッツァーと共通点が見られます。

走行装置の特徴

走行装置は、前方に誘導輪、後方には起動輪を配置し、4つの大型転輪と懸架装置が組み合わされています。この設計によりE-10は後輪駆動を実現しています。特に注目すべきは、懸架装置が車軸を中心に回転し、転輪を上下させる構造であり、車高を1,760mmから1,400mmまで下げることが可能でした。また、地上間隙は400mmで、低姿勢状態でも40mmの間隙を確保しています。

機関室には、エンジンや変速機がすべて収納されており、整備の容易さが考慮された設計になっていました。エンジンは400馬力のマイバッハHL100オットーガソリンエンジンが取り入れられる予定で、代替として350馬力の空冷式アルグスエンジンも選別されました。変速機は流体式で、無段階の変速システムが導入予定でした。

結論

当初の計画ではE-10は革新的な設計を持つ軽駆逐戦車として期待されていましたが、実際に完成した車両は存在せず、戦局の変化に伴いその開発は中止されました。E-10は、ドイツ戦車設計の一端を象徴する存在として今も注目されています。

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