EADS アストリアム

アストリアム（Astrium）は、2013年までEADS（現エアバス・グループ）傘下で宇宙システム事業を展開していた企業です。フランス、ドイツ、イギリス、スペイン、オランダに拠点を持ち、衛星、宇宙輸送、宇宙サービスという3つの主要分野で活動していました。2013年後半にEADSの防衛部門であるカシディアン（Cassidian）と合併し、エアバス・ディフェンス・アンド・スペース（Airbus Defence and Space）となりました。

アストリアムの事業領域

アストリアムは、以下の3つの主要な事業領域で活動していました。

EADS アストリアム・サテライト: 商用通信衛星、科学衛星、地球観測衛星などの衛星本体、および関連する地上設備の開発・製造を手がけていました。
EADS アストリアム・スペーストランスポーテーション: 打ち上げロケットや、軌道上インフラストラクチャの開発・製造を行っていました。
EADS アストリアム・サービシーズ: 衛星データを利用した各種サービスの開発・提供を行っていました。

特に、アストリアム・サテライトは、アストリアム全体の従業員の約半数を擁する部門であり、衛星分野における中核的な役割を担っていました。

アストリアムの沿革

アストリアムは、2000年にマトラ・マルコーニ・スペース、ダイムラークライスラー・エアロスペース（DASA）の宇宙部門、およびCRISA（スペインの宇宙関連企業）の合併により設立されました。当初はEADSとブリティッシュ・エアロスペースの合弁会社でしたが、2013年にEADSがブリティッシュ・エアロスペースの持ち分を買い取り、EADSの完全子会社となりました。

その後、アストリアムのインフラ部門はEADSの打ち上げ・宇宙機部門と統合され、EADS スペーストランスポーテーションを経てEADS アストリアム・スペーストランスポーテーションに改組されました。また、スカイネット5軍事通信衛星プロジェクトで構築された「パラダイム・セキュア・コミュニケーション」に関するイギリス国防省との契約は、EADS アストリアム・サービシーズに引き継がれました。

2004年には、スペインのCASAエスパシオがEADSの一部となり、地理情報サービス会社であるインフォテラ（Infoterra）を傘下に収めました。2006年には、フランス法人のEADS アストリアム SASが、フランス国内にあるEADS スペースの子会社を吸収合併し、アストリアムSASとなりました。

宇宙旅行への挑戦

2007年、EADSは宇宙旅行分野への進出を発表し、1段式の準軌道宇宙機「スペースジェット」の模型を公開しました。スペースジェットは、通常の飛行場から離陸し、高度に応じてジェットエンジンとロケットエンジンを使い分け、高度100kmまで上昇します。乗客はそこで3分間の無重力状態を体験できるというものでした。

当初、開発費用は10億ユーロ、費用の上限は20万ユーロと見積もられていましたが、2009年1月には、EADSアストリアムによって計画は無期限保留となりました。

アストリアムは、その短い歴史の中で、ヨーロッパの宇宙産業を牽引する重要な役割を果たしました。その技術とノウハウは、現在のエアバス・ディフェンス・アンド・スペースに引き継がれ、宇宙開発の発展に貢献しています。

外部リンク

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