ダイムラークライスラー・エアロスペース

ダイムラークライスラー・エアロスペース（DASA）の歴史とEADSへの統合

ダイムラークライスラー・エアロスペース（DASA）は、ドイツの航空宇宙産業において重要な役割を果たした企業です。その歴史は、1989年にダイムラー・ベンツの航空宇宙部門であるMTUエアロ・エンジンズとドルニエの合併によって始まりました。この合併によって設立されたDASAは、その後、メッサーシュミット・ベルコウ・ブロームの買収を機に、急速に規模を拡大していきます。

1990年代に入ると、ダイムラー・ベンツは航空機、宇宙システム、防衛、民事システム、推進という5つの部門を統合する大規模な再編を実施。いくつかの企業は独立性を保ちながらも、1992年までにほとんどがDASAに統合されました。この再編の中で、ヘリコプター部門はアエロスパシアルのヘリコプター部門と合併し、ユーロコプターが誕生しました。

社名も変遷を遂げ、1995年にはダイムラー・ベンツ・エアロスペースAGとなり、1998年のダイムラー・ベンツとクライスラーの合併に伴い、ダイムラークライスラー・エアロスペースAGへと改称されました。

EADSへの統合

1990年代後半から、欧州防衛産業では大規模な合併が活発化しました。この流れの中で、DASAは、フランスのアエロスパシアル・マトラ、スペインのコンストルチオネス・アエロナウティカスSAと合併し、2000年にEADS（European Aeronautic Defence and Space Company）を設立します。DASAはEADSドイツとして活動を継続することになります。この合併は、ヨーロッパにおける航空宇宙産業の再編において、重要な出来事となりました。

主要プロジェクト

DASAは、数多くの重要なプロジェクトに関わってきました。

MiG-29の近代化: 1993年には、MiG Aircraft Support GmbHを設立し、東ドイツから引き継がれたMiG-29戦闘機のNATO標準への性能向上を行いました。
ユーロファイター タイフーン: ユーロファイター タイフーンコンソーシアムの一員として、機体の中央部分の開発を担当し、1994年にはミュンヘン工場から初号機が飛び立ちました。
トーネード IDSの能力向上: ドイツ軍のトーネード IDS戦闘機の能力向上計画にも携わりました。
同盟国航空機の性能向上: ドイツとNATOにおける航空機製造の豊富な経験を生かし、F-4やE-3などの多くの同盟国航空機の性能向上にも貢献しています。

DASAの活動は、ドイツのみならず、ヨーロッパ、そして世界規模での航空宇宙産業の発展に貢献しました。その歴史は、技術革新と国際協力の歴史であり、現代の航空宇宙産業の礎を築いたと言えるでしょう。EADSへの統合は、より大きな枠組みの中で、その技術力と経験を活かす新たな段階への移行を示しています。今後の航空宇宙産業における技術革新の進展にも、DASAが築き上げた基盤が活かされていくことでしょう。

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