EDEN (2012年の日本映画)

映画『EDEN』：新宿二丁目のショーパブで紡がれる、人生賛歌

2012年11月17日に公開された日本映画『EDEN』（エデン）は、武正晴監督による感動作です。原作は船戸与一の短編小説「夏の渦」で、故・原田芳雄氏のアイデアを基に、プロデューサーの李鳳宇氏が映画化を実現させました。

舞台は新宿二丁目のショーパブ「EDEN」。同性愛者やニューハーフなど、社会におけるマイノリティとして生きる人々の姿が、コミカルでありながらも温かい視線で描かれています。キャッチコピーである「この世の中はもっと豊かで、人生は棄てたものじゃないわよ。」の通り、生きることの喜びと困難、そして人間関係の温かさを描いた作品となっています。

ストーリー：死から始まる、新たな繋がり

42歳になったばかりのゲイ、ミロはショーパブ「EDEN」で店長として働いています。ある日、トランスジェンダーの友人・ノリピーが彼の部屋で亡くなってしまいます。警察の取り調べでは差別的な扱いを受けますが、ノリピーの死因は病死と判明。

しかし、警察から、身元確認を拒否されたノリピーの遺体が、ミロに預けられます。ミロと「EDEN」の仲間たちは、ノリピーの華やかな人生を偲び、そして彼女の遺体を故郷である千葉県に送ることを決意します。

ノリピーの実家では、家族から冷たい言葉を浴びせられますが、ミロたちは彼女の生前の苦悩や、性転換手術への思いを必死に訴えます。そして、そこに現れたノリピーの母は、娘の遺体に涙ながらに抱きつきます。変わり果てた娘を、それでも我が子として受け入れる母の愛は、ミロたちだけでなく、観客の心にも深い感動を与えます。

魅力的なキャラクターたち

ミロを演じるのは山本太郎。面倒見がよく、仲間たちをまとめる存在です。彼自身もゲイであることを家族には隠しており、葛藤を抱えています。

ミロを取り巻く「EDEN」の仲間たちも個性的です。目立ちたがり屋のエルメス、毒舌ながら優しいペペロンチーノ、恋人の菊五郎と仲睦まじい薔薇のサーシャ、元銀行員の蘭丸など、それぞれが複雑な過去や悩みを抱えながらも、互いに支え合いながら生きています。

さらに、ショーパブのオーナーである美沙子、ノリピーの家族、ミロが住むアパートの住人など、周りの人々も物語に彩りを添えています。彼らの存在が、ミロや「EDEN」の仲間たちの生き方をより深く理解する上で重要な役割を果たしています。

社会への問いかけと、人生の肯定

『EDEN』は、単なるエンターテイメント作品にとどまりません。同性愛者やトランスジェンダーなど、社会のマイノリティが直面する差別や偏見、そして家族との葛藤をリアルに描き出しています。

しかし、それ以上に、この映画は人生の肯定的なメッセージに満ちています。困難な状況の中でも、友情や愛情によって生き抜いていく人々の姿は、希望を与えてくれます。

ノリピーの死をきっかけに、ミロや「EDEN」の仲間たちは、自分自身の人生、そして周りの人々との関係を見つめ直します。そして、その過程で、彼らは新たな繋がり、新たな理解を育んでいきます。

『EDEN』は、笑いと涙、そして深い感動を与えてくれる、忘れられない作品です。社会の多様性、そして人生の素晴らしさを改めて考えさせてくれる、そんな映画です。

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