EL/M-2032

EL/M-2032 レーダー

EL/M-2032は、イスラエルのエルタ・システムズ社によって開発された戦闘機向けの火器管制レーダーです。このレーダーは元々、イスラエル・エアクラフト・インダストリーズ（IAI）社が開発したEL/M-2035を基にして、さらに小型化や軽量化の改良が施されています。元のEL/M-2035は、イスラエルのラビ戦闘機に搭載される予定でしたが、この計画は1987年に中止されました。しかし、レーダー自体の開発は続行され、最終的にEL/M-2032として新たな形で市場に登場しました。

構造と機能

EL/M-2032は、そのデザインにおいて非常にコンパクトであり、いくつかの動作モードを搭載しています。空対空ミッションでは、捜索間測距（RWS）、単一および二重目標追尾（STT/DTT）、捜索中の追尾、空戦（ACM）などの機能を提供し、また空対地ミッションの場合にはグランド・マッピングや高解像マッピング、空対地距離測定を行うことができます。レーダー方式としてはパルスドップラー・レーダーが採用され、送信機には進行波管（TWT）が使用されています。さらに、機内データ・バスはNATOの標準規格であるMIL-STD-1553Bに対応しています。

このレーダーは、様々な航空機に適応できる特性を持っており、そのために競争力を維持することができました。IAI社は数多くの第2・第3世代ジェット戦闘機の近代化計画を行っており、EL/M-2032はこれらの計画の中で重要な役割を果たしています。

ミサイルとの統合

また、IAI社は中距離空対空ミサイル「ダービー」や短距離用の「パイソン」などを独自に開発しており、EL/M-2032はこれらのミサイルと組み合わせることで、高度な空中武器システムを構築する要素となっています。これは特に新しい戦闘機用レーダーや空対空ミサイルの取得が制限される国々にとって、非常に魅力的な選択肢となっています。

搭載機と実績

EL/M-2032は、[イスラエル]]国内での導入が図られていますが、アメリカからの制約により一部の機体への搭載がなされていないこともあります。特に、F-16I戦闘機の[[AN/APG-68|AN_APG-68]9の性能に満足できず、EL/M-2032の搭載を希望したものの、アメリカ側がこれを許可しなかった経緯があります。しかし、ロッキード・マーティンの協力を受けて進められているF-16 ACEアップグレードにも搭載が計画されています。

さらに、中国は国産のKLJ-3を開発する際に2基のEL/M-2032を輸入した事例があり、これらは1980年代にイスラエルから提供されたアビオニクスとともに用いられたとされています。

近代化改修の対象機械

EL/M-2032は多くの航空機の近代化改修プロジェクトにも採用されています。例えば、トルコのF-4E 2020ターミネーターや、いくつかのF-5の場合、さらにはMiG-21のランサーC型や、様々なクフィル機種にも搭載されています。このように、EL/M-2032は国際的な航空機の近代化に寄与しており、幅広いプラットフォームでその能力を生かしています。

まとめ

総じて、EL/M-2032は高性能な火器管制レーダーとして、多様な航空機に適応できる柔軟性と、優れた空中武器システムとの統合能力を持つことで、今日の防空戦力において重要な役割を担っています。

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