EMD F3形ディーゼル機関車

EMD F3とFP10：アメリカ黄金時代のディーゼル機関車

EMD F3は、ゼネラルモーターズ・エレクトロモーティブ・ディビジョン（GM-EMD）が1946年から1949年にかけて製造した電気式ディーゼル機関車です。イリノイ州ラグレーンジ工場で最終組立が行われ、運転席付きのAユニット1111両と、運転席のないBユニット696両が生産されました。Fシリーズの3機種目となるF3は、同シリーズで2番目に生産数が多く、大きな成功を収めました。本稿では、F3をベースに改造されたFP10についても併せて解説します。

F3：改良と進化の歴史

F3は、従来のFT・F2型の1350馬力から出力1500馬力に向上し、電動機も改良された点が特徴です。製造時期によってフェーズI～IVに分類され、外観にいくつかの変化が見られます。

フェーズI (1946年～): 外観はF2と同一です。
フェーズII (1947年2月～): Aユニット側面の丸窓が3つから2つに減少し、丸窓間にエアインテークが設けられました。このエアインテークは長方形の開口部4箇所を金網で覆った構造で、「チキンワイヤー」というニックネームで呼ばれました。製造時期によって屋根のラジエーターファン形状が異なり、前期型は角ばった形状、後期型は丸みを帯びた形状をしています。
フェーズIII (1948年3月～): エアインテークにフィルタ格子が追加され、金網カバーの面積が減少しました。このフィルタ格子はF7フェーズIまで使用されました。
フェーズIV (1948年8月～): 側面上部の金網がステンレス鋼製のグリルに変更されました。これにより、車体内部のフレームが見えにくくなりました。
* F5 (1948年10月～): F3（フェーズIV）にF7の電動機を搭載した過渡的なタイプで、ニックネームであり正式名称はF3です。F7にはダイナミックブレーキ用のファンが追加されていますが、F5にはありません。

これらのフェーズの違いはEMDの製造時の形態によるものであり、後年の修繕によって変化している車両も多く存在します。例えば、フェーズIIの「チキンワイヤー」は撤去された車両や、フェーズI・IIの側面をフェーズIV仕様に改造された車両などが存在します。

FP10 (F10)：F3の新たな姿

FP10は、元はガルフ・モービル・アンド・オハイオ鉄道に納車されたF3を改造した機関車です。1970年代後半、エンジン出力が1500馬力から1750馬力に向上し、F9と同等の出力となりました。合計19両が存在し、18両がF3からの、1両がF7からの改造です。

FP10では丸窓が廃止され、エアインテークのフィルタ格子が4つから5つに増設されました。ヘッドエンドパワー方式への改造など、機器変更に伴い車体形状にも変化が見られます。F3からの改造車は、側面上部の金網がステンレス鋼製のグリルに交換され、テールライトも大型化されています。屋根上のラジエーターファンも形状が変更されています。FP10はF10と呼ばれる場合もありますが、機関車自体は同じです。

旅客列車牽引と保存状況

Fシリーズは本来貨物列車用でしたが、オプションで蒸気発生装置を取り付けることが可能となり、旅客列車にも使用されました。アッチソン・トピカ・アンド・サンタフェ鉄道では、スーパーチーフの牽引にもF3が使用されていました。FP10もマサチューセッツ湾交通局やメトロノース鉄道で通勤列車に使用されていました。

F3はFシリーズで2番目に生産数が多いため、多くの車両が保存されています。カナダのアルバータ州鉄道博物館、カナダ鉄道博物館、トライステート鉄道歴史協会、カリフォルニア州鉄道博物館、C&O歴史協会、セントラルメインアンドケベック鉄道などに保存車両が存在します。これらの車両の中には、フェーズIIの「チキンワイヤー」がそのまま残っているものもあります。FP10も、アディロンダック・シーニック鉄道、メトロノース鉄道、エダビル鉄道、ゴールドコースト鉄道博物館、リオグランデ・シーニック鉄道、アイダホノーザンアンドパシフィック鉄道などに保存、もしくは運用されています。

まとめ

EMD F3とその改造車FP10は、アメリカ鉄道史において重要な役割を果たしたディーゼル機関車です。その進化と多様なバリエーション、そして現在も残る保存車両は、黄金時代のアメリカ鉄道の遺産として、後世に語り継がれていくでしょう。

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