ERYX (ミサイル)

ERYX（エリックス）は、フランスとカナダが共同開発した携帯式対戦車ミサイルシステムです。1989年に開発が完了し、1994年から各国で順次採用されました。このミサイルの名称は、ケニアスナボア（Eryx colubrinus）というヘビに由来します。

概要

ERYXは、一人の射手が肩に担いで照準・射撃を行うことができる個人携行式システムであり、主な標的は装甲車両ですが、それ以外にも建築物や野戦築城、さらには低空を飛行するヘリコプターに対しても攻撃能力を持っています。この多用途性がERYXの大きな特徴の一つです。

誘導方式には有線SACLOS（Semi-Automatic Command to Line Of Sight）を採用しています。これは、射手が目標を照準し続けることで、ミサイルが有線ケーブルを通じて誘導される方式です。

ERYXのもう一つの特徴は、発射時に「ソフトランチ」方式を採用している点です。この方式では、ミサイルが発射直後に低速で発射され、後方への爆風を最小限に抑えることができます。これにより、発射スペースの制約が緩和され、市街地など狭い場所でも運用が可能になっています。

ミサイル本体は、発射後加速し、約4.3秒で600mに到達します。最大速度は245m/sで、加速を補助するモーターを搭載しています。飛翔中、ミサイルは目標の発熱源を追跡し、パルス信号を通じて誘導装置に情報を伝達します。この誘導システムは、高い命中精度を実現しています。

MBDA社の発表によれば、7,000回のモーター実射試験を実施した結果、95%の高い命中率を記録したとされています。このデータは、ERYXの信頼性と有効性を示しています。

採用国

ERYXは、以下の国々で採用されています。

フランス：2023年時点で、フランス陸軍が地上発射型を運用しています。
カナダ
ブラジル
ノルウェー
トルコ（1999年-2004年）：一時的に導入。
マレーシア

脚注

ERYXは、その携行性と多用途性から、世界各国の軍隊で採用されています。

関連項目

対戦車ミサイル
* 9K115 - ソビエト連邦の同級ミサイル。

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