ESCAPE (今井美樹のアルバム)

今井美樹による通算15作目のオリジナルアルバム『ESCAPE』は、2003年8月27日に東芝EMIからリリースされました。この作品は、発表当時の音楽メディアの形態に合わせてコピーコントロールCD（CCCD）仕様で販売されました。

本作は、前作『Pearl』から約一年という期間を経て届けられたアルバムであり、「Organic Electronica」という独自のコンセプトを掲げて制作されました。これは、電子音楽的な要素とオーガニックで温かみのあるサウンドを融合させつつ、成熟したリスナー層に向けた洗練されたポップミュージックを追求する意図が込められています。アルバム全体を通じて、大人のための高品質なサウンドスケープが展開されています。

『ESCAPE』の音楽的特色として、今井美樹の長年のパートナーでもある布袋寅泰が総合プロデューサーを務めている点が挙げられます。布袋は単にアルバム全体の方向性を決定しただけでなく、収録曲すべての作曲を手掛け、さらに多くの楽曲で自ら作詞も担当しています。これにより、アルバムには布袋ならではの音楽性が深く反映されています。

また、本作では音楽的な多様性を実現するために、複数の著名なアレンジャーやサウンドプロデューサーとのコラボレーションが行われています。日本の音楽シーンで活躍する才能が集結し、楽曲ごとに異なるアプローチでサウンドを構築しています。例えば、先行シングルとして発表された「ホントの気持ち」、そしてアルバム収録曲の「SHOWER」や「風に吹かれて」では福富幸宏がサウンドプロデュースを担当しています。その他、「空中庭園」は朝本浩文が、「月光」と「FOREST」は鈴木正人が、そして「THIS IS LOVE」は島健がそれぞれサウンドプロデュースを手掛けています。これらの多彩な才能が集まることで、『ESCAPE』は幅広い音楽性を持つアルバムに仕上がっています。

アルバムには、先行シングルとしてリリースされた「ホントの気持ち」が、このアルバムのために再構築されたバージョンで収録されています。また、そのシングルのカップリング曲として発表されていた「ラブソングは止まらない」も本作に収められており、シングルを通じてアルバムへの期待を高めていたファンにとっては嬉しい収録内容となっています。

『ESCAPE』が発売された際に付いていた帯には、「かろやかに、生きてみたいと思いませんか」という印象的なキャッチコピーが添えられていました。このフレーズは、アルバムが内包する、心に軽やかさをもたらすようなサウンドやメッセージ性を象徴していると言えるでしょう。様々な音楽的要素が融合し、布袋寅泰のプロデュースのもと、新たなアレンジャーとのコラボレーションによって生み出された『ESCAPE』は、今井美樹のキャリアにおいて、サウンドの探求を深めた重要な作品の一つとして位置づけられます。このアルバムは、今井美樹が表現する大人のポップミュージックの新たな地平を切り開いた作品と言えるでしょう。

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