EUSO計画

EUSO計画：宇宙から超高エネルギー宇宙線を捉える壮大な挑戦

EUSO計画（Extreme Universe Space Observatory）は、地球に降り注ぐ超高エネルギー宇宙線（10²⁰eV以上のエネルギーを持つ荷電粒子）の起源を解明するため、宇宙空間からの観測を目指す国際的なプロジェクトです。このエネルギーレベルの宇宙線は非常に稀で、地球上に到達する頻度は100平方キロメートルあたり年間1個程度と推定されています。そのため、広大な範囲を一度に観測できる宇宙空間からの観測が不可欠なのです。

地球大気を検出器として利用する革新的な手法

EUSO計画では、地球大気を検出器として利用するユニークな手法を採用しています。超高エネルギー宇宙線が地球大気と衝突すると、空気シャワーと呼ばれる現象が発生します。この際に発生する蛍光やチェレンコフ光を、国際宇宙ステーション（ISS）や気球、人工衛星などに搭載された望遠鏡で観測することで、宇宙線の到来方向やエネルギーを特定します。宇宙線のエネルギーが非常に高いため、宇宙空間の磁場による影響は小さく、観測された到来方向からほぼ直接的に発生源を特定できることが期待されています。

計画の変遷と様々なミッション

EUSO計画は、当初、欧州宇宙機関（ESA）を主体とした国際宇宙ステーションの「コロンバス」モジュールへの搭載を予定していましたが、予算上の都合で計画が変更されました。その後、日本の実験棟「きぼう」への搭載を目指す「JEM-EUSO」として再構成され、理化学研究所とJAXAが中心となり、世界16カ国95研究機関の研究者らが参加する大規模な国際プロジェクトへと発展しました。

JEM-EUSOは、3枚のフレネルレンズと多数の光電子増倍管からなる巨大な望遠鏡を用いて、空気シャワーの蛍光の軌跡を高速度で撮像する計画でしたが、JAXAによる推進体制の見直しが行われ、現在は、極限エネルギー宇宙線観測のための宇宙ミッション実現に向けて研究が継続されています。

JEM-EUSO以外にも、計画の進展とともに様々なミッションが展開されてきました。地上での技術実証として、ユタ州のテレスコープアレイ実験サイトに設置された1メートル口径のプロトタイプ望遠鏡「EUSO-TA」や、高高度気球を用いた「EUSO-Balloon」「EUSO-SPB」といったミッションが実施され、貴重なデータが取得されてきました。また、ロシアのロモノソフ衛星に搭載された「TUS」や、ISSのロシアモジュールに搭載された「Mini-EUSO」など、様々なアプローチによる観測が行われています。

未来へ向けた展望

現在、新たなミッションとして、NASAのスーパープレッシャー気球を用いたEUSO-SPB2号機の打ち上げや、ロシアが主体となるK-EUSO、そしてNASAがサポートする独立衛星2機によるステレオ観測ミッションPOEMMAなどが計画されています。これらのミッションを通して、超高エネルギー宇宙線の謎解明に向けた研究はますます加速していくでしょう。EUSO計画は、宇宙の起源と進化、そして極限的な物理現象の解明に繋がる、人類の知的好奇心を満たす壮大な挑戦なのです。

関連事項

物理学: 高エネルギー物理学、宇宙線物理学
天文学: 高エネルギー天文学
* 関連機関: [宇宙航空研究開発機構]、[アメリカ航空宇宙局]、[理化学研究所]、[欧州宇宙機関]

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