EXPRESS (人工衛星)

EXPRESS（EXPeriment RE-entry Space System）

EXPRESSは、自立帰還型の無人宇宙実験システムとして、1995年に日独の共同プロジェクトとして打ち上げられました。このプロジェクトの目的は、宇宙における微小重力環境を利用した実験を行い、回収技術と宇宙利用技術の開発を推進することでした。しかし、打ち上げは残念ながら失敗し、計画された実験は一度も実施できませんでしたが、カプセルの回収には成功しました。

プロジェクトの背景

この計画は、1980年代末に提案されたミュークラスロケットを使用した微小重力実験の要請がきっかけとなって始まりました。1990年10月、日独科学技術協力協定に基づきこのプロジェクトがスタートしました。EXPRESSの主な目標は、機動的に宇宙環境を利用するための実験機会を確保し、宇宙での産業利用を促進するための技術を開発すること、さらに軌道再突入技術を習得することでした。

このプロジェクトでは、ドイツ宇宙機関（DARA）が依頼したロシア製カプセルが使用され、カプセルは再利用可能で、最大5回の実験を予定していました。第一回目の実験では、日本のM-3SIIロケットが打ち上げを担当し、地球周回軌道での石油精製用触媒の創製実験が計画されていました。実験後、カプセルはオーストラリア南部に着水し、回収される予定でしたが、打上げのトラブルにより、この計画は破綻してしまいました。

関与団体

日本側からは宇宙科学研究所（ISAS）と通商産業省がプロジェクトに参加し、ドイツ側からも複数の機関が関与していました。無人宇宙実験システム研究開発機構（USEF）は、日本側からの依頼でプロジェクトの総合的な取りまとめを担当し、システムの設計や実験装置の開発を行いました。

実験機体の構成

実験で使用されたカプセルは、再突入して回収されるリエントリモジュール（RM）と、そのシステムを運用するサービスモジュール（SM）から成り立っていました。RMとSMの結合時の全長は2.2メートル、直径1メートル、重量770キログラムで、実験終了後に固体ロケットで地球周回軌道を離脱し、RMは約120キロメートルの高度から再突入する予定でした。

RM内には、触媒創製実験用の加熱炉と、再突入実験で使用される耐熱材料が搭載されていました。ロシア製カプセルの選定には、国際的な協力の側面も影響しているとされています。

打上げの失敗とカプセルの行方

EXPRESSは1995年1月15日、鹿児島宇宙空間観測所から打ち上げられましたが、打ち上げ直後に重量過多のため異常振動が発生し、予定されていた軌道には達しませんでした。そのため、衛星からの信号は受信できず、最終的にはカプセルが太平洋に落下したと誤認されました。

しかし、実際にはカプセルはガーナの山村に無事着陸しており、その後の調査でその存在が確認されました。カプセルが表面にロシア語の書かれたものであったため、その正体が最初は不明だったが、住民には「空から何かが落ちてきたら幸せになれる」という言い伝えもあり、大切に扱われていました。最終的には、カプセルはドイツに移送され、徹底的な調査が行われました。

結論

EXPRESSプロジェクトは、技術的な成功や失敗を超えて、国際的な協力の重要性を示すものでした。また、環境や文化が交差する中で生まれる人々のストーリーも、この計画の語り草となっています。

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