Element (ソフトウェア)

Elementについて

Elementは、Matrixプロトコルを基盤としたフリーかつオープンソースのインスタントメッセンジャーであり、ユーザーが自身のサーバーを選択できる分散型のシステムを採用しています。Apache License 2.0のもとで配布されているため、自由に利用・カスタマイズすることが可能です。

このメッセンジャーは、エンドツーエンドの暗号化をはじめとする多くのセキュリティ機能、さらにグループやチャンネル、ユーザー間でのファイル共有をサポートしています。ユーザーは、デスクトップアプリとしては全ての主要なオペレーティングシステムで、またモバイルアプリとしてはAndroidやiOSでもアクセスできるため、非常に幅広い利用が可能です。Elementの開発はNew Vectorという会社が主導しており、この会社はMatrixプロトコル自体の改善にも関与しています。

技術的な側面

Elementは、Matrixクライアントの開発を効率化するために、Reactベースのソフトウェア開発キットであるMatrix React SDKを使用して構築されています。基本的にはウェブ技術を中心にしており、Electronフレームワークを利用することで、Windows、macOS、Linux向けのデスクトップクライアントが作られています。また、AndroidとiOS向けのスマートフォンアプリは、それぞれのプラットフォームの開発環境を用いて開発されています。特にAndroid版はGoogle PlayとF-Droidから入手可能ですが、両者の間にはごくわずかな違いがあります。F-Droidでは、Googleのプロプライエタリなクラウドメッセージング機能は含まれていません。

歴史

Elementは2016年の7月にベータ版として「Vector」という名前で発表されました。その後、同年9月に「Riot」という名称に変更され、カナダのブランドコンサルタントによって再ブランド化が行われました。2016年の11月には、Matrixにおけるエンドツーエンド暗号化の初期実装が行われ、ユーザーに向けて提供されました。そして2019年4月、セキュリティに関する問題が発生し、Google Playにおいて新たなアプリが登場しました。

主な機能

Elementは、IRCやSlack、Telegramといった他のインスタントメッセンジャーサービスと連携する「ブリッジ」機能があることで知られています。また、WebRTCを利用した音声通話やビデオ通話、グループチャットの統合も実装されています。加えて、ユーザーはこのアプリおよびそれを支えるサーバーをセルフホスティングすることができるため、プライバシーを重視する層に特に支持されています。ルーム機能では、ユーザーが自由に会話を楽しむことができ、2020年1月1日の時点では一部のルームがデフォルトで暗号化されていない状態でしたが、その後のアップデートで改善が行われています。

利用者の反応

Elementは、Matrixにおける最も成熟したクライアントとして新規ユーザーに強く推奨されています。このアプリは、特にメディアにおいてSlackやその他のメッセンジャーの代替品として認識されています。オープンソース及びフリーソフトウェアのコミュニティにおいて最も人気のある選択肢となっており、この傾向がLinuxディストリビューションや暗号通貨に関するルームでの活発な利用に反映されています。2021年にはGoogle Playで5万回以上のダウンロードが記録され、F-Droidや他のプラットフォーム経由でも多くのユーザーが存在しています。

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