WebRTC

WebRTC (Web Real-Time Communication) について

WebRTCは、ウェブブラウザやモバイルアプリケーションにリアルタイム通信機能を提供する、自由でオープンソースのプロジェクトです。この技術を利用することで、プラグインのインストールやネイティブアプリのダウンロードなしに、ウェブページ上で直接ピアツーピア通信が可能になります。具体的には、ウェブブラウザ間でのボイスチャット、ビデオチャット、ファイルの共有などを容易に実装できます。

主要な特徴

• - オープンソース: 誰でも自由に利用、開発、改良できる。
• - プラグイン不要: ブラウザの標準機能として動作するため、追加のソフトウェアインストールが不要。
• - リアルタイム通信: 低遅延で音声や映像、データのやり取りが可能。
• - 主要ブラウザ対応: Apple、Google、Microsoft、Mozilla、Operaといった主要なブラウザベンダーがサポート。

技術的な詳細

WebRTCは、単一のプロトコル仕様（プロトコルスイート）とJavaScript API仕様で構成されています。これらの仕様は、W3C（World Wide Web Consortium）およびIETF（Internet Engineering Task Force）によって定義され、複数の規格書に分散して記述されています。

WebRTCの主な目的は、ブラウザ、モバイルプラットフォーム、IoTデバイス向けに高品質なRTP(Real-time Transport Protocol)アプリケーションを開発しやすくすること、そして、共通のプロトコルセットで通信できるようにすることです。リファレンス実装はBSD[[ライセンス]]の自由ソフトウェアとして公開されており、GStreamerをベースにしたOpenWebRTCという別のフリー実装も存在します。JavaScriptの開発者として知られるブレンダン・アイクは、WebRTCを「開かれたウェブへの戦いにおける新たな戦線」と評価しています。

歴史

WebRTCは、Googleがオープンソース化したことで、ブラウザにおけるリアルタイムコミュニケーションの基盤が形成されました。その後、IETFによるプロトコル標準化とW3CによるAPI標準化が進められました。W3CによるWebRTCのドラフトは、Google ChromeとMozilla Firefoxで実験的に実装され、APIはWHATWG（Web Hypertext Application Technology Working Group）で予備的に記述されました。このAPIはConnectionPeer APIと呼ばれ、Ericsson Labsによって標準概念実装が作成されました。

ウェブリアルタイムコミュニケーションワーキンググループは、以下の点を考慮して仕様を進化させています。

• - IETFのRTCWEBグループとの連携。
• - ローカルキャパシティとローカルストリームを公開する際のプライバシー問題。
• - データチャネル実装に関する技術的な議論。
• - 初期実験からの経験。
• - 他のグループや個人からのフィードバック。

主要なAPI

WebRTCは主に以下のAPIで構成されています。

• - `getUserMedia`: カメラやマイクなどのメディア入力をユーザーに許可する。
• - `RTCPeerConnection`: ピア間でビデオや音声を直接やり取りするためのクラス。シグナリング、コーデック処理、P2P通信、セキュリティ、帯域管理を担う。
• - `RTCDataChannel`: ピア間で任意のデータを双方向通信するためのクラス。WebSocketsと同じAPIを使用し、低レイテンシーを実現。

さらに、WebRTCには統計を取得するためのAPIである `getStats` も存在し、Webアプリケーションがセッションの統計情報を取得できるようにします。

シグナリングについて

WebRTC自体には、シグナリング（ピア同士の検索と接続確立プロセス）のためのAPIは含まれていません。アプリケーションでは、Interactive Connectivity Establishment（ICE）を利用します。ICEプロセスでは、シグナリングやNATトラバーサルのためにサーバーを介した通信が必要になる場合があります。

サポートブラウザ

WebRTCは以下の主要なブラウザでサポートされています。

PC

• - Microsoft Edge 12+
• - Google Chrome 28+
• - Mozilla Firefox 22+
• - Safari 11+
• - Opera 18+
• - Vivaldi 1.9+
• - Brave

Android

• - Google Chrome 28+（29以降でデフォルト有効）
• - Mozilla Firefox 24+
• - Opera Mobile 12+

その他

• - ChromeOS
• - Firefox OS
• - BlackBerry 10
• - iOS (MobileSafari/WebKit, iOS 11+)
• - Tizen 3.0

仕様の構成

WebRTCは、以下の6つの機能グループで構成されています。

1. ローカルシステムサポート機能
2. プライバシー懸念の解消（例：カメラアクセス許可）
3. RFC 7874の処理機能を実装するエンドポイント

用語

WebRTCに関連する主な用語は以下の通りです。

• - リアルタイムメディア: コンテンツの生成と提示が時間的に密接して行われるメディア。例：電話、ビデオ会議。

関連規格

W3CやIETFにおいて、以下のWebRTC関連規格が策定されています。

• - (W3C, IETF規格書)

脚注

W3C WebRTC API
IETF Real-Time Communication in WEB-browsers (rtcweb) Working Group

関連項目

• - HTML5
• - HTML5オーディオ
• - DTLS-SRTP: WebRTCの鍵管理に不可欠なプロトコル

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