Enfleurage

林原めぐみ『Enfleurage』：記憶と香りに満ちた珠玉のアルバム

1995年3月3日、スターチャイルドより発売された林原めぐみ6枚目のオリジナルアルバム『Enfleurage（アンフルラージュ）』は、彼女自身の音楽キャリアにおいて重要な位置を占める作品です。そして2005年3月16日には、初回限定盤仕様での再発売が実現し、多くのファンを喜ばせました。

このアルバムは、それ以前のシングル曲を中心としたベスト盤『WHATEVER』、『SHAMROCK』に続く作品として発表されました。そのため、彼女がこれまで歌ってきた数々のキャラクターソングを多数収録しており、いわばキャラクターソング・ベストアルバムの第3弾と言えるでしょう。しかし、2000年のベストアルバム『VINTAGE S』『VINTAGE A』リリース以降は、オリジナルアルバムとして位置付けられるようになりました。これは、単なるキャラクターソング集以上の、アーティスト林原めぐみの音楽的深みと多様性を示す証と言えるでしょう。

アルバムタイトル『Enfleurage』は、フランス語で「冷浸法」を意味します。これは、当時林原めぐみが趣味としていたアロマテラピーで用いられる手法であり、花の香りを抽出して精油を作る伝統的な方法です。このタイトルは、アルバム全体を彩る繊細で奥深い香り、そして、時間をかけて丁寧に作り上げられた楽曲たちのイメージを鮮やかに呼び起こします。

『Enfleurage』のジャケット写真と、初回限定盤に同梱されていた写真集は、阪神・淡路大震災の直前である1994年末、兵庫県神戸市で撮影されました。この事実は、アルバムに特別な意味合いを与えています。震災の爪痕が残る神戸の街並みを背景に、林原めぐみが歌う楽曲たちは、何とも言えない切なさと、同時に希望に満ちた未来への祈りを込めたものとなっているのではないでしょうか。

キャッチコピーである「元気いっぱい胸いっぱい。今日はheartが深呼吸。」は、アルバム全体を象徴する言葉として、聴く者の心に深く響きます。楽曲それぞれの持つ個性、そしてアルバム全体を通して感じられる、力強さと繊細さ、そして静謐な美しさ。それらは、聴く者の心に深く浸透し、忘れられない感動を与えてくれるでしょう。

2005年の再発売時には、初回限定盤として、紙BOX仕様、32Pブックレット、そして40Pに及ぶ別冊写真集が付属しました。これらの豪華な仕様は、アルバムへの愛情と、ファンへの感謝の念が込められたものと言えるでしょう。震災直前の神戸で撮影された写真の数々は、今となっては貴重な記録であり、このアルバムをさらに特別な存在へと高めています。

『Enfleurage』は、単なる音楽作品としてだけでなく、時代の空気、そしてアーティスト自身の心の軌跡を凝縮した、まさに「記憶」と「香り」に満ちた珠玉のアルバムと言えるでしょう。聴くたびに、新しい発見と感動を与えてくれる、そんな作品です。

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