EtherCAT

EtherCATの概要

EtherCAT（イーサキャット）は、Ethernet for Control Automation Technologyの略称で、Beckhoff Automation社が開発した産業用イーサネットベースのフィールドバスシステムです。リアルタイム性が求められる自動化機器向けに設計されており、高速なデータ転送と高精度な同期機能を特徴としています。

従来の産業用ネットワークでは、コントローラと各デバイス間で個別に通信を行うため、通信オーバーヘッドが大きくなりがちでした。EtherCATは、この問題を解決するために、オンザフライ処理という革新的な技術を採用しています。

オンザフライ処理による高速通信

EtherCATでは、コントローラから送信された1つのイーサネットフレームの中に、複数のデバイス宛てのデータが格納されます。各デバイスは、フレームを受信しながら、自身のアドレスに宛てられたデータのみを処理し、残りのデータは次のデバイスへ透過的に転送します。この処理は、データの受信と同時に実行されるため、通信遅延を最小限に抑えることができます。

各デバイスへのデータは、データグラムと呼ばれる単位で送受信されます。データグラムには、宛先アドレスとデータの種類を示すヘッダーが付加されており、デバイスは自身のアドレスと一致するデータグラムのみを処理します。

高精度な時刻同期

EtherCATは、分散時刻同期方式を採用することで、高精度な時刻同期を実現しています。各デバイスは、ローカルに時計を保持し、コントローラから定期的に送信される時刻同期フレームを基に、時刻を調整します。時刻同期フレームは、ネットワーク上のすべてのデバイスを巡回し、各デバイスはフレームの遅延時間を計測することで、正確な時刻を把握することができます。これにより、1μs以下の高精度な時刻同期が可能になります。

プロトコル

EtherCATは、イーサネット規格(IEEE 802.3)に準拠しており、独自のイーサタイプ(0x88a4)を使用します。データリンク層は、EtherCATスレーブコントローラが処理し、アプリケーション層では、CAN application over EtherCAT (CoE)などのプロトコルが使用されます。CoEは、EtherCATスレーブコントローラに接続されたマイクロコントローラ上で動作するソフトウェアとして実装されます。

EtherCAT Technology Group (ETG)

EtherCATの仕様や認証などは、EtherCAT Technology Group (ETG)によって管理されています。ETGは2003年に設立され、世界中に2400社以上の会員企業を擁する大規模な組織です。ETGは、ドイツのニュルンベルクに本部を置き、東京、北京、ソウル、オースティンにも支部があります。会員資格は比較的容易に入手できるため、近年会員数は増加傾向にあります。

EtherCATのメリット

高速なデータ転送速度
高精度な同期機能
低いハードウェアコスト
柔軟なネットワーク構成
広範なデバイスサポート
活発なコミュニティとサポート体制

まとめ

EtherCATは、リアルタイム性と高精度な同期が求められる産業用オートメーションにおいて、高い信頼性と効率性を提供するフィールドバスシステムです。オンザフライ処理による高速通信、分散時刻同期による高精度な時間同期、そして活発なETGによるサポート体制は、EtherCATの大きな強みとなっています。今後も、産業用ネットワークの重要な技術として、更なる発展が期待されます。

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