EtherNet/IP

EtherNet/IP：産業用ネットワークの基盤技術

EtherNet/IPは、標準的なEthernetネットワーク技術をベースに構築された、産業用オートメーションシステム向けのネットワークプロトコルです。共通産業プロトコル（CIP）を採用することで、リアルタイム制御やデータ交換を効率的に行うことができます。製造業、ハイブリッドシステム、プロセス制御など、幅広い産業分野で活用され、高い信頼性と相互運用性から、多くの企業に選ばれています。

CIPとEthernetの融合

EtherNet/IPは、インターネットプロトコルスイートとIEEE 802標準に準拠したEthernet技術の特性を最大限に活用しています。これにより、既存のEthernetインフラストラクチャとのシームレスな統合を実現し、コスト削減やシステム構築の簡素化に貢献しています。

一方、CIPはオブジェクト指向のデザインを採用することで、リアルタイム制御アプリケーションに必要な様々なサービスやデバイスプロファイルを提供します。これにより、異種機器間の相互運用性を確保し、システム全体の統合性と効率性を高めることができます。EtherNet/IPはCIPのオブジェクトモデルフレームワークに、Ethernetの標準機能やUDPなどの主要な要素を統合することで、効率的なデータ通信を実現しています。特に、UDPはI/Oメッセージの伝送に使用され、リアルタイム性の高いデータ交換を可能にしています。

ODVAによる管理と発展

EtherNet/IPとCIPの両技術は、ODVA（Open Device Vendors Association）によって管理されています。ODVAは、世界中の300社以上の会員企業から構成される組織であり、産業用ネットワーク技術の標準化と発展に大きく貢献しています。ODVAは、技術開発、規格策定、相互運用性テストなどを通して、EtherNet/IPの普及と信頼性向上に努めています。

歴史と発展

EtherNet/IPの開発は、ControlNet International, Ltd. (CI) の技術作業部会において1990年代に開始されました。その後、ODVAとCIとの共同技術協定を経て、2009年にはODVAが単独で管理するようになりました。現在では、DeviceNet、ControlNet、CompoNetと並ぶ、CIPをベースとした主要な産業用ネットワークプロトコルのひとつとして、世界中で広く利用されています。

技術的詳細

EtherNet/IPでは、Ethernetノードは特定の機能を持つデバイスに分類され、以下の特徴的な機能を提供します。

基本的なI/Oデータ転送： UDPベースの暗黙のメッセージングにより、I/Oデータの高速な転送を実現します。
パラメータ設定とプログラムダウンロード： TCPを用いた明示的なメッセージングにより、パラメータ、セットポイント、プログラム、レシピなどを柔軟に設定・ダウンロードできます。
状態監視： UDPを介したポーリング監視、定期監視、状態変化監視により、システムの状態をリアルタイムで把握できます。
多様な通信方式： ユニキャスト、マルチキャスト、ブロードキャスト通信に対応することで、様々なネットワーク構成に柔軟に対応できます。

EtherNet/IPでは、明示的なメッセージングにTCPポート番号44818、暗黙のメッセージングにUDPポート番号2222が使用されます。

オープンソース実装

OpENerというオープンソース実装（修正BSDライセンス）が存在し、GitHubでソースコードを入手可能です。このオープンソース実装は、EtherNet/IP技術の理解と発展に貢献しています。

まとめ

EtherNet/IPは、信頼性、柔軟性、相互運用性に優れた産業用ネットワークプロトコルとして、現代の製造現場のオートメーションシステムに不可欠な技術です。CIPとの連携により、リアルタイム制御とデータ交換を高度に実現し、様々な産業分野における生産性向上に貢献しています。今後の発展も期待される、重要な産業用ネットワーク技術です。

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