F・R・リーヴィス

F・R・リーヴィス（1895年～1978年）は、20世紀半ばのイギリスを代表する文芸批評家の一人です。イングランドのケンブリッジに生まれ、ケンブリッジ大学で教鞭をとりながら、独自の文芸批評を展開しました。彼の精密で鋭い批評は多くの支持者を生み出し、彼らを取り巻く批評家集団は「リーヴィス派」として知られるようになりました。

リーヴィスの批評の大きな特徴は、その徹底した「実践批評」にあります。彼は、単に作品を分析するだけでなく、作品が読者にどのような影響を与えるのか、また、作品が社会や文化にどのような役割を果たすのかを深く考察しました。そのため、彼の批評は単なる文学批評にとどまらず、社会批評、文化批評としての側面も持ち合わせています。

彼は、シェイクスピアやジョン・ミルトンといった古典作品から、D・H・ロレンスやT・S・エリオットといった近代作家まで、幅広い作品を対象に批評を行いました。特に、質の高い文学作品を高く評価し、俗悪な大衆文化や商業文化、さらにマルクス主義といった思想に対しても批判的な立場を鮮明に示しました。その主張は、上質の文学を保存し、継承していくことの重要性を強調するものでした。

彼の代表的な著作には、『偉大なる伝統』（ジョージ・エリオット、ヘンリー・ジェイムズ、ジョゼフ・コンラッドの三作家を論じたもの）、『D.H.ロレンス論』、そして『現代詩の革新』などがあります。これらの著作は、英文学研究に大きな影響を与え、現在もなお多くの読者から支持されています。

しかし、リーヴィスの功績と同時に、その権威主義的で排他的な態度もまた、批判の対象となっています。彼は、自身の評価基準に合致しない作品や作家を厳しく批判したため、多くの論争を引き起こしました。また、特定の作家や作品への偏愛が、客観的な批評を阻害したという指摘もあります。

現代においては、リーヴィスの批評方法や思想に対する批判的な見方も少なくありません。彼の排他的な選好や、大衆文化に対する否定的な姿勢は、現代の多様な文化状況においては必ずしも適切ではないと見なされることもあります。しかしながら、彼の綿密なテキスト分析や、文学作品への深い洞察は、今でも多くの批評家や研究者に影響を与え続けています。

リーヴィスの業績を正しく評価するためには、彼の功績と限界の両面を理解する必要があります。彼の作品は、英文学研究の歴史において重要な位置を占めている一方、その思想や方法論は現代の文脈において再検討されるべきであると言えるでしょう。彼の生涯と作品を通じて、20世紀の英文学研究、ひいては文化批評の変遷を理解することができるのです。

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