権威主義

権威主義の概念とその特徴

権威主義（けんいしゅぎ）は、政治学において重要な概念であり、主に権力を特定の指導者や政党が独占・行使する体制を指します。この体制では、個人や社会は権威に盲目的に従うことが求められます。つまり、権威を背景にして行動し、思考する態度が強調されるのです。権威主義は、全体主義とは異なり、より穏健な政治体制として位置づけられています。しかしながら、非民主的な特徴をもつ総称として、独裁政治や軍国主義を含む広義の用語でもあります。

権力の集中とその影響

権威主義的な体制の特徴として、国や地域内の政治権力が一人または少数の指導者に集中している点が挙げられます。これらの指導者は、通常、選挙で選ばれることはなく、恣意的かつ責任を負わない形で支配を行います。ただし、全く選挙を行わない権威主義国家は少数であり、時には民意を示すための選挙が実施されていますが、その結果は反体制派の弾圧や不正開票によって歪められることが多いです。

スウェーデンのV-Dem研究所による『デモクラシー・レポート2022』においては、約60の国と地域が「選挙権威主義」に分類され、これはロシアやベラルーシなどが該当します。また「独裁」に該当する国家は約30存在し、中華人民共和国や北朝鮮がその代表例です。対して、自由民主主義を謳う国々は34、選挙民主主義を持つ国々は55あります。

権威という概念

「権威」の語源はラテン語の「auctoritas」で、古代ローマに由来し、その意味は「保証」や「所有権」を指します。政治において権力と権威は異なり、権力は強制による支配であるのに対し、権威は個人や社会が自発的に従うことを意味します。そのため、権威主義的支配体制は強固なリーダーシップと支配構造を形成します。

歴史的背景と発展

権威主義に関する政治学的考察は、1964年にホアン・リンスによって提唱されたと言われています。彼は、全体主義と比較して、戦後のスペインのファシスト政権など、より穏健な独裁型の政体を権威主義的であると位置づけました。権威主義体制には、経済的および社会的多元主義が存在し、完全なイデオロギーに縛られることはありませんが、一定の保守的傾向が見られます。

現代における権威主義の問題

現代においても、権威主義は依然としてさまざまな形で存在します。例えば、中華人民共和国の政治体制やロシア連邦、イランなどは、権威主義体制として論じられることがあります。これらのケースでは、権威の強調により特定の思想やエリート層が支配し、実質的な権力の固定化が進むことがあります。

さらに、権威主義的な支配は、既存の他者との権力関係を超えて、大衆からの支援を得ることができる場合もあり、特に社会的不安や経済的困難がある時にその影響力が増す傾向があります。日本の歴史においても、第二次世界大戦前の政治体制は権威主義的であったと考えられています。

このように、権威主義は政治的、社会的背景に根ざした影響力を持ち続け、権力の正統性や支配の手法に関して様々な議論を呼んでいます。

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