FANTASTIC VISION

TM NETWORK|TM_NETWORKが手掛けた楽曲「FANTASTIC VISION」は、バンドの長いキャリアにおいて重要な位置を占める一曲です。この楽曲は1984年に制作が開始され、翌1985年にシングル「アクシデント」のカップリング曲として初めて一般にリリースされました。さらに同年発売のオリジナルアルバム『CHILDHOOD'S END』にも10曲目として収録され、多くのファンに聴かれることになります。

楽曲が誕生した1980年代半ばは、TM NETWORK|TM_NETWORKがまだブレークする前の時期にあたります。作詞と作曲は、リーダーでありサウンドプロデューサーでもある小室哲哉氏が担当しました。この「FANTASTIC VISION」は、リリースに先行して特定のメディアとのタイアップを獲得していました。1984年、福岡県を拠点とするフジテレビ系列の民放テレビ局、テレビ西日本（TNC）が、局のキャンペーンソングとして本楽曲を採用したのです。当初は番組のオープニングなどで使用されることがありましたが、後にテレビ西日本のCMへと使用用途が変更されました。

TM NETWORK|TM_NETWORKがその後、日本全国区でのブレークを果たし、知名度が飛躍的に向上すると、それに伴いテレビ西日本のCMの評判も高まりました。「FANTASTIC VISION」はそのCMイメージソングとして、数年間にわたって継続的に使用されることとなります。この長期にわたるタイアップは、楽曲のみならず、TM NETWORK|TM_NETWORKの存在を福岡県を中心に広く知らしめる一助となったと言えるでしょう。

「FANTASTIC VISION」の特筆すべき点は、そのインストゥルメンタル版が現在に至るまで長きにわたりテレビ西日本の番組で使用され続けていることです。具体的には、同局の天気予報のBGMとして採用されており、2025年2月時点においても使用が確認されています。これは、リリースから数十年を経てなお、楽曲の一部が特定の地域で日常的に耳にされているという稀有な事例と言えます。

さらに、この楽曲には一般的に広く知られているCD収録バージョンとは異なるバージョンが存在することも、特筆すべき事実です。特に、歌詞や曲調が異なり、デモソング用として制作されたバージョンが存在します。前述のテレビ西日本の天気予報で使用されているBGMは、このデモソング用インストゥルメンタル版をアレンジしたものであるとされています。興味深いことに、テレビ西日本には実際に放送で使用された音源が現存しているとされていますが、2020年時点では残念ながら商品化には至っていません。

一方で、このデモソングバージョン自体は、商業媒体で確認することができます。2004年に発売されたCD-BOX『WORLD HERITAGE DOUBLE-DECADE COMPLETE BOX』の特典DVD（Disc1）には、そのデモソングバージョンが収録されており、ファンはその存在を知ることが可能になりました。

また、これとは別に、歌詞が異なるライブバージョンも存在します。この音源は、2024年リリースのBlu-Ray BOX『The Force -40th Anniversary Edition-』の特典CD（Disc2）に収録されています。これは、楽曲の制作初期段階である1984年12月に行われたライブで披露されたものであり、いわゆる「プロトバージョン」と位置付けられています。このように、リリース前の楽曲をライブで初披露し、製品版とは歌詞やアレンジが異なるバージョンが存在する例は、TM NETWORK|TM_NETWORKの楽曲制作プロセスやライブにおける試行錯誤を示すものと言えます。類似のケースとしては、1991年リリースのアルバム『EXPO』に収録された「TOMORROW MADE NEW」も挙げられます。こちらも、リリース前のライブで初めて披露されたバージョンは歌詞が異なっていました。

これらの点から、「FANTASTIC VISION」は、単なる一楽曲としてだけでなく、そのメディアとの長期にわたるタイアップ、そして複数のバージョンの存在という多角的な側面から、TM NETWORK|TM_NETWORKの活動や楽曲の変遷を語る上で興味深い対象と言えるでしょう。

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