FLIRT/フラート

『FLIRT/フラート』（1995年、アメリカ）は、ハル・ハートリー監督・脚本による恋愛映画です。ニューヨーク、ベルリン、東京という3つの都市を舞台に、それぞれ異なる背景を持つ3組のカップルが、愛と別れ、そして未来への葛藤を描きます。

この映画の最大の特徴は、3組のカップルの会話が驚くほど類似している点です。まるで異なる場所、異なる文化、異なる性的な指向のカップルが、同じような恋愛の悩みや葛藤を抱えているかのような構成となっています。この共通性は、普遍的な恋愛のテーマを浮き彫りにし、観客に深い共感を呼び起こします。

ニューヨークのカップル、ビルとエミリーは6ヶ月間の交際を経て、岐路に立たされています。ビルはパリへの3ヶ月間の帰郷を控え、かつて別れた恋人がパリにいることをエミリーは知っています。エミリーは将来について問いかけますが、ビルは曖昧な返答で終始します。彼の言葉の裏には、過去の恋愛への未練や、未来への不安が潜んでいるのかもしれません。パリでビルは、過去の恋人と再会し、複雑な感情に揺れることになります。

ベルリンに住むヨハンとドワイトは、同性愛カップルの関係にあります。ヨハンはニューヨークへの3ヶ月間の出張を控えており、出発を前にドワイトは二人の将来について真剣に問いかけます。しかし、ヨハンは明確な答えを避け、ニューヨークへと旅立ちます。彼が出張を選んだ背景には、現実的な問題や、二人の関係に対する不安定さ、そして自分自身への迷いが隠されていると想像されます。

東京を舞台にした3組目のカップルは、映画監督のハルとミホです。6ヶ月の交際期間を経て、ハルはアメリカへの3ヶ月間の帰郷を決意します。彼はミホに未来について尋ねますが、ミホは答えに窮します。二人の関係は、文化的な違いや、将来へのビジョンにおけるずれなど、様々な要因が絡み合って複雑な様相を呈していることがうかがえます。

3組のカップルは、それぞれ異なる背景を持ち、異なる問題を抱えているにもかかわらず、共通して将来への不安や、相手への真摯な気持ち、そして避けられない別れという現実に向き合っています。この映画は、単なる恋愛映画という枠を超え、現代社会における人間関係や、グローバル化がもたらす複雑な感情を繊細に描き出しています。

『FLIRT/フラート』は、JVDからビデオ、メディアリングからレーザーディスクが発売されていましたが、現在は廃盤となっており、入手困難な作品となっています。しかし、ハートリー作品を愛するファンたちの間では、DVD化を望む声が根強く、消費者リクエスト型のショッピングサイトなどでもその要望は高まっています。この希少性も相まって、本作は、現代の恋愛観を問いかけるだけでなく、映画史における隠れた名作として、今後さらに注目を集める可能性を秘めていると言えるでしょう。

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