FOR YOUNG ELECTRIC POP

POLYSICSのメジャー3rdアルバム『FOR YOUNG ELECTRIC POP』：ポップサウンドと葛藤の軌跡

2002年7月24日、日本のロックバンドPOLYSICSはキューンレコードよりメジャー3rdアルバム『FOR YOUNG ELECTRIC POP』をリリースしました。全編に渡るポップなサウンドと洗練された楽曲構成が特徴の本作は、バンドの音楽性を象徴する作品と言えるでしょう。しかし、その裏には、商業的な成功という点では苦い経験が潜んでいました。

アルバム発売当初、オリコンチャートにはランクインせず、売上は伸び悩みました。後にハヤシ（POLYSICSのメンバー）は、この頃のライブ活動や音楽性に対するバンドのメッセージが、十分に世間に伝わっていなかったと語っています。この状況は、バンドとリスナー、そして音楽業界との間のコミュニケーションの難しさを示唆していると言えるでしょう。

先行シングルは一切リリースされず、唯一既発曲は前作ミニアルバム『LO-BITS』に収録されていた「Code4」のみでした。初回限定カラーケース仕様という試みも、売上を伸ばすには至りませんでした。

個性的な楽曲群と意外なコラボレーション

アルバムには、キャッチーなメロディーとテクニカルな演奏が融合した楽曲が多数収録されています。特に「BLACK OUT FALL OUT」は、アルバムのリードトラックとして選定されましたが、これはバンドの意向ではなく、スタッフ側の決定によるものでした。この決定にハヤシは強い不満を募らせ、「にわかテクノポップ」というレッテルを貼られたことに対して怒りを露わにしています。このエピソードは、バンドとレコード会社側の意思疎通の難しさや、商業的な成功とアーティストの表現意図との間の板挟みを浮き彫りにしています。

また、お笑いコンビ・チュートリアルの出囃子として使用されている「IT'S UP TO YOU」や、The Knackのカバー曲「MY SHARONA」など、多彩な楽曲が収録されていることも特徴です。特に「MY SHARONA」は、テレビ朝日系のバラエティ番組『アメトーーク!』でエンディングテーマとして使用され、カバーバージョンは番組のスポットなどで流れていました。これらの楽曲は、POLYSICSの音楽的幅広さを示す好例と言えるでしょう。

さらに、ミニアルバム『LO-BITS』収録の「CODE4」も収録されていますが、アルバムバージョンとしてイントロとアウトロが拡張され、アコースティックギターの音色が追加されているなど、アレンジが施されています。

後年の再評価とバンドサウンドの再構築

『FOR YOUNG ELECTRIC POP』は、商業的には成功を収められませんでしたが、後に発売されたベストアルバム『POLYSICS OR DIE!!!!』では、「BLACK OUT FALL OUT」がバンドサウンドを前面に押し出したアレンジで再レコーディングされています。これは、バンドが時間の経過とともに自身の音楽性を再確認し、より洗練された表現方法を獲得していったことを示していると言えるでしょう。この再レコーディング版は、初期のPOLYSICS作品に新たな魅力を加えるとともに、バンドの成長と進化を物語っています。

『FOR YOUNG ELECTRIC POP』は、商業的な成功という点では悔いの残る作品かもしれませんが、個性的な楽曲群、バンドとスタッフとの葛藤、そして後年の再評価といった要素を通じて、POLYSICSというバンドの複雑な歴史の一端を垣間見ることができる、重要な作品と言えるでしょう。このアルバムは、単なる音楽作品としてだけでなく、バンドの成長過程や音楽業界の現実を映し出した貴重なドキュメントとして、今もなお多くのリスナーに語り継がれています。

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