FUJIC

FUJIC - 日本初の電子式コンピュータ

FUJIC（フジック）は、日本で初めて本格的に稼働した電子式コンピュータです。このコンピュータは、富士写真フイルムの技術者である岡崎文次によって1949年に開発が始まり、1956年に完成しました。FUJICは、その革新性と計算性能から、国立科学博物館に所蔵されており、2008年には情報処理技術遺産にも指定されています。

開発の背景

コンピュータの開発は、世界的にはENIACに代表されるように、大規模な国家プロジェクトから始まりましたが、日本ではTACのような大企業や、EDSACのように少数の研究者が中心となっていました。FUJICは後者に位置づけられます。富士写真フイルムの岡崎は、レンズ設計に必要な計算を効率化するためにコンピュータの導入を考え、自らの手で設計を試みました。

製造に至るまで

岡崎は1948年、IBMのSSECに関する記事を読み、機械による即時計算の可能性を感じました。1950年代に、岡崎はカメラレンズの設計課長を務めており、複雑な計算作業を数十人の社員が手作業で行っている状況を目の当たりにしていました。そこで、自作のコンピュータを考え、1949年に「レンズ設計の自動的方法について」という提案書を会社に提出しました。これが認められ、研究予算として20万円が支給されました。

情報収集と設計

開発作業は主に自分の業務の合間を利用して行われました。文献調査のために当時少なかった資料の収集が重要でした。岡崎は大阪大学などから情報を得て、手に入れた部品は安価に露店で調達しました。開発にあたって特にモデルにした機種はなく、岡崎独自のセンスで設計が進められました。彼は「コンピュータは電気を使ったそろばん」と考えていたため、数値処理において基礎的な部分から入念に取り組みました。

製造と特許

1952年12月に本格的な製造に入ると、6ヶ月分で200万円の予算を獲得しました。特許もいくつか取得し、最も注目されたのは循環回路で、後にIBMにライセンスされました。この時期、岡崎が纏めた経費は少しずつ申請することで、会社に驚かれないように調整していました。

FUJICの登場とその影響

1956年に完成したFUJICは、計算のスピードが人力に比べて1000倍から2000倍向上しました。多くの外部からの使用希望があったものの、社内の反響はそれほどではありませんでした。最終的に、FUJICは早稲田大学に寄贈され、その後は国立科学博物館に展示されています。

システム構成

FUJICの論理回路には約1700本の真空管が使われており、メインメモリには水銀遅延管が搭載されていました。プログラム内蔵方式を採用し、17種類の命令が用意されていました。入力はカードリーダを通じて行い、出力には電動タイプライターやブラウン管が使われていました。これにより、当時としては非常に先進的な設計が実現されました。

まとめ

FUJICは、岡崎文次の情熱と技術力によって開発された日本初の電子式コンピュータとして歴史に名を刻んでいます。その影響は、現在のコンピュータ技術にも繋がっており、計算機の自立した発展を促しました。

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