FUSE (人工衛星)

FUSE（Far Ultraviolet Spectroscopic Explorer、遠紫外線分光探査機）は、アメリカ航空宇宙局（NASA）が主導し、複数の大学や他国の宇宙機関と共同で開発・運用された宇宙望遠鏡です。1999年6月4日にデルタIIロケットによって打ち上げられ、地球低軌道、高度約760kmに投入されました。その軌道傾斜角は25度で、約100分周期で地球を周回していました。エクスプローラー77号とも呼ばれています。

FUSEの最大の特徴は、他の宇宙望遠鏡では観測が難しい遠紫外線領域（90.5-119.5nm）の観測に特化している点です。この遠紫外線領域は、水素や重水素といった宇宙における基本的な元素の吸収線や輝線が多く存在するため、これらの元素の分布や進化を研究する上で非常に重要です。そのため、FUSEは、宇宙における物質の化学組成や進化過程を解明するための重要なツールとなりました。

FUSEの主な観測対象の一つに、宇宙における重水素の存在量と分布の研究があります。重水素は、ビッグバン直後の宇宙で生成されたと考えられており、その観測は初期宇宙の状態を理解するための重要な手がかりとなります。FUSEの観測によって、銀河系内外の重水素の分布が明らかになり、宇宙の進化に関する理解が大きく進展しました。

また、FUSEは遠紫外線における原子の吸収線や輝線の豊富な観測データを取得しました。これにより、数多くの銀河や銀河間の化学組成や化学進化の研究が行われ、宇宙における元素の生成と分布に関する知見が大きく深まりました。

2007年7月12日、FUSEの姿勢制御に使用されていたリアクションホイールの故障により、観測を継続することが不可能になりました。衛星自体の状態は良好だったものの、精密な観測に必要な姿勢制御ができないため、観測計画は終了することとなりました。FUSEは、その運用期間中に、400以上の科学論文を生み出し、多くの科学者による研究に貢献しました。現在でも、FUSEの観測データは、宇宙の研究に活用されています。

関連情報として、以下の外部リンクが参考になります。

FUSE - ウェイバックマシン（2007年5月21日アーカイブ分）（JAXA、日本語）
FUSE website at Johns Hopkins University
FUSE website at Institut d'Astrophysique de Paris
FUSE archive at Multimission Archive at STScI (MAST)

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