FidoNet

FidoNetとは

FidoNetは、世界中の電子掲示板（BBS）同士を接続するためのコンピュータネットワークです。1990年代初頭にインターネットが普及する以前、世界中で活発に利用されていました。現在ではその規模は縮小していますが、一部地域ではまだ利用されています。

起源

FidoNetは、1984年にカリフォルニア州サンフランシスコのTom Jenningsによって非商用ネットワークとして開始されました。Jenningsが開発したソフトウェアにより、複数のBBS間がネットワークで結ばれました。その後、他のBBSソフトウェアも対応し、通信プロトコルが整備されることで、趣味でコンピュータを利用する人々の間で人気を集めました。

FidoNetの構造

FidoNetは、階層構造を持つネットワークです。各階層にはコーディネータが配置され、メンバー間の紛争解決などを行います。各コーディネータは、担当範囲のノードを管理する責任を負います。最下層のコーディネータは、通常、市単位のノードを管理します。その上位には、州や小国単位のコーディネータが存在し、さらにその上には、全世界を6つのゾーンに分けたゾーンコーディネータがいます。そして、ゾーンコーディネータの中から国際コーディネータが選出され、ネットワーク全体を管理します。

技術

FidoNetは、BBS間のダイヤルアップ接続を前提に設計されたため、その特性に合わせたポリシーと構造が採用されています。FidoNetの主要な機能は、BBSユーザー間のメッセージ交換のためのプロトコルであるNetmailの転送です。Netmailメッセージには、送信者と受信者の名前、そしてFidoNetでのアドレスが記録され、それらの情報に基づき、特定のユーザーにのみメッセージが送られます。

また、Netmailメッセージにはファイルを添付することができ、ファイルの共有やBBSをまたいだゲームデータの転送などに利用されました。特に、Echomailは、ネットニュースのような議論の場を提供する機能として広く利用されました。Echomailでは、ある話題に関するBBS内のローカルなメッセージを圧縮し、Netmailメッセージに添付して送信します。受信側はそれを解凍して、ローカルのBBSの同じ話題の場所に挿入します。Echomailは非常に普及し、FidoNetの中核をなす機能となりました。個人間のNetmailのやり取りは、あまり行われていませんでした。

FidoNetの技術仕様は、FTS-0001として文書化されており、以下の内容が定義されています。

ハンドシェイク：メーラーソフトウェアが相手を特定し、セッションのメタ情報を交換するためのプロトコル
転送プロトコル（XMODEM）：メールを含むファイルを転送するプロトコル
メッセージ形式：システム間でやり取りされるメッセージの形式
Echomailに関する仕様は別途定義されています。

ノードを構成するソフトウェア

FidoNetでは、1つのパッケージにすべての機能を搭載するのではなく、モジュール式の設計が採用されています。複数のアプリケーションが共有ファイルを使用して通信し、シェルスクリプトやバッチファイルによって切り替えを行います。

メーラーソフトウェア：ファイルやメッセージのやり取りを担当し、アプリケーション間の制御メッセージも経由します。電話がかかってきた際に受け付けるのもメーラーソフトウェアです。外に発信すべきメールがある場合は、メーラーソフトウェアが適切な相手に電話をかけてメールを送信します。時間帯によって電話料金が異なるため、メーラーソフトウェアは適切な時間にまとめてメールを送信することが一般的です。

BBSソフトウェア：人間（ダム端末）と対話するシステムです。BBSソフトウェアは、ユーザーがシステムのメッセージベースを利用したり、メールを書いたりできるようにします。他のBBS向けのメールは、後でメーラーソフトウェアが送信します。ユーザー間のファイル交換、ゲーム、ノード間チャットなどが可能です。

scanner/tosser：BBSユーザーが他のノードに送信するメッセージをメーラーソフトウェアの送信ボックスに置くソフトウェアです。逆に、外部からのメールを変換してBBSユーザーが読めるようにします。scanner/tosserは、ルーティング情報を管理し、メールをどのノードに転送するかを制御します。

メッセージリーダー：シスオペが利用するメッセージ読み書きソフトウェアです。FidoNetのノードにはBBSがない場合もあり、シスオペ個人がメッセージのやり取りのために接続していることもあります。

当初のソフトウェアは、2000年問題などの影響により、現代のシステムでは動作しないものが多くあります。また、オープンソースではなかったため、開発者がコミュニティから離れると同時に保守されなくなったものも多いです。しかし、同等の機能を持つ新たなソフトウェアが提供され、FidoNetは現在も機能し続けています。

現状

1990年代中ごろと比較すると、FidoNetの利用は激減しましたが、ロシアなどでは現在も広く利用されています。インターネット接続に切り替えたBBSでも、FidoNetでのメール配信を継続しているところがあります。また、FidoNetのEchomail会議は、ゲートウェイを介してUSENETニュースに組み込まれています。FidoNetとインターネット間のメールゲートウェイも存在しますが、インターネット側からのスパムなどにより、ゲートウェイが機能不全に陥ることもあります。

関連項目

UUCP

外部リンク

International FidoNet Home Page
Alternate FidoNet Home Page
FidoNet Technical Standards Committee Home Page
International Echolist Home Page
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