File Allocation Table

FATファイルシステム：歴史、仕様、種類、そしてexFATへ

FATファイルシステムは、マイクロソフトのMS-DOS、そしてその前身であるDISK-BASICで使用されたファイルシステムです。現在でも、デジタルカメラやゲーム機など、様々なデバイスで広く利用されています。本稿では、FATファイルシステムの歴史、仕様、様々な種類、そしてその長所と短所、さらには後継規格であるexFATまでを詳細に解説します。

歴史

FATファイルシステムの起源は1977年、ビル・ゲイツとマーク・マクドナルドによるDISK-BASICのファイル管理仕様まで遡ります。MS-DOSの普及とともにFATファイルシステムも広く使われるようになり、Windows NT系OSでNTFSが導入された後も、特にリムーバブルメディアにおいては、そのシンプルな構造と互換性の高さから現在まで生き残っています。Windows Meまでは、家庭向けOSの標準ファイルフォーマットとして君臨していましたが、Windows NT系OSでは、他のOSからのアップグレードやリムーバブルメディアのサポートといった限定的な用途に用いられています。セキュリティや大容量化への対応などの観点からは、NTFSへの移行が推奨される場合が多いです。

仕様

FATファイルシステムは、ディスク上のデータをクラスタと呼ばれる単位で管理します。FATテーブルは、クラスタ番号をキーとして、それぞれのクラスタが使用中か、空き領域か、あるいはエラークラスタなのかといった状態情報を格納する、いわば巨大な一次元配列です。ファイルは、複数のクラスタが連鎖した形で表現され、各クラスタの場所を示す情報をFATテーブルから取得することでファイルにアクセスします。FATテーブルはディスク上の重要なデータであるため、多くの実装では冗長性を確保するために複数のFATテーブルが用意されています。

初期の実装では、FATテーブルへの書き込みがマウント・アンマウント時にまとめて行われることもありました。そのため、アンマウントを忘れてしまうと、ディスクに書き込まれていない変更が失われてデータ損失につながる危険性がありました。MS-DOS以降のバージョンのFATファイルシステムでは、バッファリングや遅延書き込みといった仕組みを導入することで、この問題への対応が図られています。しかし、大容量リムーバブルメディアの普及に伴い、「安全な取り外し」操作の重要性が増していると言えるでしょう。

実装

ディスク上のFATテーブルは、ブートローダーやシステムイメージの後に配置され、その近くにルートディレクトリテーブルも配置されています。ディレクトリエントリにはファイル名、属性、そしてファイルの先頭クラスタ番号が記録されています。サブディレクトリは、特別なディレクトリエントリとしてルートディレクトリに格納され、階層構造を実現しています。ファイルのクラスタ情報は、ディレクトリエントリに記載された最初のクラスタ番号から始まり、FATテーブルのエントリをたどることで取得できます。FATテーブルのエントリには、次のクラスタ番号、またはファイルの末尾を示す特別な値が格納されます。

種類

FATファイルシステムには、クラスタ番号の管理ビット数によって、FAT12、FAT16、FAT32の3種類があります。さらに、長いファイル名に対応したVFATや、フラッシュメモリ向けに最適化されたexFATといった拡張規格も存在します。それぞれの仕様を以下に示します。

FAT12: 12ビットのクラスタ識別子を使用し、最大4084クラスタまで対応。主にフロッピーディスクで使用されていました。
FAT16: 16ビットのクラスタ識別子を使用し、最大65,524クラスタまで対応。MS-DOSで広く利用されました。
VFAT (Virtual FAT): FAT12/16/32で長いファイル名（最大255文字）を使用できるように拡張した規格です。
FAT32: 32ビットのクラスタ識別子を使用し、最大268,435,444クラスタまで対応。Windows 95 OSR2で登場し、大容量ストレージに対応できるようになりました。しかしながら、実装上の制約により、実際に利用できるクラスタ数には制限があります。
exFAT (Extended File Allocation Table): フラッシュメモリ向けに設計された、FATファイルシステムの後継規格です。従来のFATとの互換性はありません。ファイルサイズの制限が撤廃され、大容量ストレージへの対応が強化されています。

長所と短所

FATファイルシステムは、シンプルで高速なアクセスが可能な一方、いくつかの短所も抱えています。

長所:
シンプルな構造で実装が容易
アクセス速度が速い
多くのOSでサポートされている

短所:
堅牢性に欠ける
大容量ディスクには非効率
拡張性に乏しい
ファイル名に制限がある (VFAT非対応の場合)
* タイムスタンプにタイムゾーンの考慮がない

まとめ

FATファイルシステムは、その歴史とシンプルな構造から現在でも利用されていますが、大容量化やセキュリティの観点からは、NTFSやexFATへの移行が望ましいケースも多いでしょう。特に、重要なデータの保存には、より堅牢なファイルシステムの使用を検討することが重要です。 FATファイルシステムの理解は、コンピュータシステムの基礎を学ぶ上で非常に重要です。

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