MS-DOS

MS-DOS（マイクロソフト ディスク・オペレーティング・システム）

MS-DOSは、1981年にマイクロソフトが開発・販売したオペレーティングシステムであり、主にパーソナルコンピュータ向けに特化されています。このOSは、元々はIBMのパソコン用に開発されたIBM PC DOSをもとにしており、その後他の製品にもOEM提供される形で広がりました。MS-DOSが成功を収めることで、パーソナルコンピュータ市場におけるデファクトスタンダードとなり、さまざまなハードウェアに対応するバージョンが生まれました。

概要と機能

MS-DOSは主にコマンドラインインターフェースを持ち、シングルタスクのオペレーティングシステムです。基本的にファイルシステムはUNIXスタイルの階層構造で構成されており、アプリケーションとの組み合わせにより、DOSSHELLやMicrosoft Windowsなどでグラフィカルユーザーインターフェースをサポートしました。ただし、画面描画に関するAPIは備えていないため、固有の環境で動作するアプリケーションが多く、他機種間での互換性が低いという側面も持っています。

MS-DOSはIntel 8086を基盤とした16ビットシステムですが、成功したIBM PCの影響で818ビットコンピュータや各種の組み込み機器にも広く対応しました。主要なファイル管理機能はFAT（File Allocation Table）を基本にしており、ファイル名は8.3形式で、ベース名8バイト、拡張子3バイトという制限があります。

歴史的背景

1980年、IBMは独自のパーソナルコンピュータの開発に着手し、そのOSの開発をマイクロソフトに依頼しました。当初、IBMはデジタルリサーチのCP/Mを利用しようとしていましたが、交渉がうまくいかなかったため、最終的にマイクロソフトにOSの開発を依頼しました。1981年5月、マイクロソフトはCP/MクローンであるQDOSを購入し、それを基にMS-DOSを開発しました。1981年8月にはMS-DOS 1.10がIBM PC DOSとして出荷され、同時にMS-DOSのOEM供給も開始されました。

その後、MS-DOSはIBM PC以外でも広く普及し、1982年にはOEM供給が進み、MS-DOSというブランド名が認知されるようになりました。1985年にはMicrosoft Windowsが登場し、DOSエクステンダーとしての役割も持ち始めました。

タスク管理とメモリ管理

MS-DOSはシングルタスクの設計ですが、DOSSHELLやWindowsとの併用により疑似的なマルチタスク環境を提供しました。しかしその一方で、メモリ管理には制約があり、通常のメモリ空間は最大で640KB程度しか使用できず、より大きなメモリを活用するための拡張機能（EMSやXMS）が必要でした。

バージョンの進化

MS-DOSには複数のバージョンが存在し、バージョン5においてはマルチタスク機能が向上し、ユーザーの利便性も高まりました。1993年のバージョン6ではディスク圧縮機能が追加され、さらなる進化を遂げましたが、次第にWindows系のOSへの移行が進む中、1995年のWindows 95の登場によって単独OSとしての必要性は低下していきました。

現在の位置づけ

MS-DOSの全盛期は過ぎ去りましたが、その影響は今なお続いています。オープンソース版も存在し、様々な互換OSが登場しています。特に、FreeDOSなどは現在でも愛用されているため、古いソフトウェアを動作させる環境として活用されています。コンピュータの歴史において、MS-DOSはその基盤となり、数多くの技術の進化に寄与したことは間違いありません。

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