Final Cut Pro

Final Cut Pro：プロフェッショナル映像編集ソフトウェアの進化

Appleが開発・販売するFinal Cut Proは、macOSおよびiPadOS上で動作するノンリニアビデオ編集ソフトウェアです。長年にわたり、プロの映像編集者から高い支持を得てきたこのソフトウェアは、その歴史の中で幾度かの大きな転換期を迎え、常に進化を続けてきました。

黎明期とFinal Cut Studio

Final Cut Proの起源は、アドビでPremiereの開発に携わっていたエンジニアたちがマクロメディアで開発した「KeyGrip」というソフトウェアに遡ります。AppleがKeyGripの開発権を取得し、1999年に「Final Cut Pro」としてバージョン1.0がリリースされました。その後、バージョンを重ねるごとに機能が強化され、多くのプロフェッショナル映像編集者に使われるようになりました。特にバージョン6と7では、Motion、Soundtrack Pro、DVD Studio Pro、Compressor、Colorなどを含むFinal Cut Studioスイートの一部として提供され、総合的な映像制作環境を提供しました。拡張性の高さも特徴で、高性能なハードウェアとの組み合わせにより、大規模なプロジェクトにも対応できました。2009年時点でのユーザー数は140万人を超えていました。

Final Cut Pro X：革新と進化

2011年、Final Cut Proは大きく進化を遂げます。バージョン10.0としてリリースされた「Final Cut Pro X」は、64ビット化、インターフェースの大幅刷新、Grand Central DispatchとOpenCL（後にMetal）のサポートなど、内部構造から一新された革新的なソフトウェアでした。しかし、大幅な変更はユーザーに混乱をもたらし、当初は批判も浴びました。

しかし、Appleはその後も無料アップデートを継続し、機能追加とパフォーマンス向上を図り、徐々にユーザーからの信頼を取り戻していきました。4K、さらにはRED ONEなどの高解像度カメラに対応したほか、クリップの自動グループ分け、レンズフレアや手ぶれ補正などの映像修正機能も強化されました。また、並列処理やバックグラウンドレンダリングによる高速化も実現されました。2018年にはユーザー数が250万人を突破しました。

Final Cut Pro XはMac App Storeから配信され、価格は発売当初35,000円でしたが、その後変動し、2023年6月時点では45,000円となっています。学生・教職員向けには、Logic Pro、Motion、Compressor、MainStageとセットになったPro Appバンドルも用意されています。

Final Cut Pro Xのバージョンアップと新機能

Final Cut Pro Xは、リリース以降も頻繁にアップデートが繰り返され、機能強化やパフォーマンス向上、バグ修正が行われてきました。主なアップデート内容には、Retinaディスプレイ対応、5K REDCODE RAWのネイティブ編集、8K、360°VR編集への対応、HEVC、HEIF対応、カラーグレーディング機能の刷新、ProRes RAW対応などが含まれます。さらに、2019年にはMetalベースのプロセッシングエンジンへの刷新により処理速度が大幅に向上、2020年にはAppleシリコンへの対応が行われました。

2020年11月には、バージョン10.5から名称を「Final Cut Pro」に戻し、Apple M1チップとNeural Engineへの対応により、パフォーマンスと効率がさらに向上しました。 その後も継続的なアップデートにより、オブジェクトトラッカーの機能強化、シネマティックモード対応、音声分離、機械学習によるノイズ低減などの機能が追加されています。また、iPad用Final Cut Proも登場し、場所を選ばずに編集作業が行えるようになりました。

Final Cut Pro 11.0：AIと空間ビデオ編集の融合

最新バージョンであるFinal Cut Pro 11.0（2024年11月リリース予定）では、Apple Vision Pro対応による空間ビデオ編集機能や、Appleシリコンを活用したAI機能が大幅に強化されています。AIによるマグネティックマスクは、時間のかかる作業を大幅に削減、Transcribe to Captions機能は音声からのキャプション自動作成を可能にし、ワークフローの効率化が図られています。さらに、90、100、120fpsでの編集、新しいトランジションやエフェクト、キーボードショートカットの追加など、多くの機能改善が行われています。

ワークフローとインターフェース

Final Cut Proは、ビューア、キャンバス、ブラウザ、タイムラインという4つの主要な画面で構成されています。ブラウザに素材を格納し、タイムライン上で編集を行い、キャンバスでプレビューを確認するという直感的なワークフローを採用しています。

まとめ

Final Cut Proは、長年にわたる進化とユーザーからのフィードバックに基づいて、常に改善され続けている、プロフェッショナル向けの強力な映像編集ソフトウェアです。その拡張性、機能性、そして最新のAI技術の活用により、これからも映像制作の現場で重要な役割を果たしていくでしょう。

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