Floods of tears/夜想花

Floods of tears／夜想花

「Floods of tears／夜想花」（フラッズ・オブ・ティアーズ／やそうか）は、日本のロックバンド、L'Arc〜en〜Cielが1992年11月25日にリリースしたインディーズシングルです。発売元はNight Gallery Recordsで、バンドにとって初のCD作品となりました。

概要

このシングルは、映像作品『L'Arc-en-Ciel』から約8ヶ月ぶりに発表された公式作品で、バンド名義でCD作品をリリースするのは初めてのことでした。また、L'Arc〜en〜Cielがインディーズ時代にリリースした唯一のシングル作品であり、kenが正式加入してから初の作品、そしてperoが在籍していた最後の作品でもあります。

表題曲の1つ「Floods of tears」は、美しいアルペジオと切ないメロディラインが特徴的な楽曲です。この曲は、1993年4月にリリースされた1stアルバム『DUNE』にリアレンジ・リテイクバージョンが収録されており、アルバムバージョンでは後藤新吾がディレクターを務めたミュージックビデオが制作されました。この映像は、1993年10月21日に発売されたクリップ集『TOUCH OF DUNE』に収録されています。

もう1つの表題曲「夜想花」は、心地よいアルペジオのループと、サウンドエフェクトのようなギターアプローチが印象的なダークなナンバーです。

両曲のレコーディングでは、クレジットには表記されていませんが、kenがギターだけでなくキーボードも担当しています。kenは、キーボードを担当した経緯について、「誰がキーボードを弾くのかと思っていたら、自然と自分のところに話が来た」と語っています。

リリースの経緯

本作はL'Arc〜en〜Ciel初のCDシングルですが、バンドの意向だけでリリースされたわけではありません。当時、L'Arc〜en〜CielはNight Gallery Recordsと契約し、アルバムのレコーディングを進めていました。しかし、メンバーは完成したアルバムの出来に納得できず、発売中止をレーベルに相談しました。ところが、レーベル側は「原盤権を行使してアルバムをリリースする」と回答し、中止する場合はレコーディング費用を全額支払うよう要求したため、協議は難航しました。

このような状況下で、レコーディング費用の一部を補填するため、「Floods of tears」と「夜想花」のシングル化が半ば強制的に決定されました。その後、バンドのリーダーであるtetsuyaは、L'Arc〜en〜Cielに興味を持っていたDanger Crue Recordsの大石征裕と接触し、大石がNight Gallery Recordsと交渉した結果、レコーディング費用をDanger Crue Recordsが負担することで原盤権が譲渡されることになりました。これにより、アルバム音源は廃棄され、L'Arc〜en〜CielはDanger Crue Recordsと契約し、1stアルバム『DUNE』の制作に取り掛かることになります。

大石は、L'Arc〜en〜Cielとの出会いを振り返り、「ラルクとの関係は、揉めていた問題をクリアにすることから始まった」と自身の著書で述べています。

また、tetsuyaは、自身がリスペクトするDEAD ENDが所属していたナイトギャラリーからシングルをリリースできたことを嬉しく思っていたとコメントしています。さらに、Night Gallery Recordsとの関係が上手くいかなかった理由を「同じ価値観、同じ理念を共有していない人とは、会話が成り立たない」と語っています。また、本作発売の経緯について、tetsuyaは「ビジネスなので、お金をかけて作ったものを回収しないといけないのは当然」と理解を示しています。

リリース形態

本作は、通常盤（CD）の1形態でリリースされました。1,000枚の数量限定で発売され、事前予約だけで完売しました。

収録曲

1. Floods of tears

作詞: hyde / 作曲: tetsu / 編曲: L'Arc〜en〜Ciel

美しいアルペジオと切ないメロディラインが特徴的な楽曲。作曲者のtetsuyaは、ギターのアルペジオに力を入れて制作したと語っています。kenも、L'Arc〜en〜Cielの楽曲の中で好きな曲としてこの曲を挙げています。hydeは、雨の情景を思い浮かべながら歌詞を書き、歌詞には雨の中に佇む情景が描かれています。tetsuyaは、歌詞が乗る前の曲に対し、「風が吹いて枯葉が舞っているイメージ」を抱いていたそうです。

1993年4月リリースの1stアルバム『DUNE』には、リアレンジ・リテイクバージョンが収録されており、このアルバムバージョンでは、イントロのオルゴールの音がアウトロに配置されています。また、本作発売から約1ヶ月後にドラマーのperoが脱退し、sakuraが加入したため、アルバムバージョンは完全なリテイク音源となっています。sakuraは、この曲について「難しく、どうやって叩いていいのかわからなかった」と語っています。また、サビ部分は「音符の洪水」だったとも述べています。

この曲は、1996年から1997年のコンサートツアー以降、長らくライブで演奏されていませんでしたが、2011年のバンド結成20周年記念ライブで約14年ぶりに演奏されました。このライブでは、本作と同様にイントロでオルゴールの音が流されました。

この楽曲は、L'Arc〜en〜Cielに在籍したすべてのドラマーが演奏し、公式に音源化されている珍しい楽曲でもあります。本作には初代ドラマーperoの演奏が、アルバム『DUNE』には2代目ドラマーsakuraの演奏が、そして20周年記念ライブの音源には3代目ドラマーyukihiroの演奏が収録されています。

2. 夜想花

作詞: hyde / 作曲: ken / 編曲: L'Arc〜en〜Ciel

心地よいアルペジオのループと、サウンドエフェクトのようなギターアプローチが印象的なダークなナンバー。作曲者のkenは、この曲をL'Arc〜en〜Ciel加入前に趣味で作っていたと語っています。hydeが歌メロをつけたことで音源化されました。ギター録りでは、ボトルネック奏法にディレイをかけたサウンドエフェクトが使用されています。

この曲は、1993年のライブツアー「Close by DUNE」などで披露され、ライブでは曲の後半で激しいバンドサウンドが展開されるアレンジバージョンで演奏されていました。

参加ミュージシャン

hyde：Vocal
ken：Guitar
tetsu：Bass
pero：Drums

収録アルバム

オリジナルアルバム
『DUNE』 (#1,アルバムバージョン)
『DUNE 10th Anniversary Edition』 (#1,アルバムバージョン、#1、#2)
ベストアルバム
『TWENITY 1991-1996』 (#1,アルバムバージョン)

参考文献

『ロッキンf』、立東社、1993年5月号
『SHOXX』、音楽専科社、1993年5月号Vol.16
『ロッキンf』、立東社、1995年9月号付録
『L'Arc〜en〜Ciel is』、シンコー・ミュージック、1996年
『大石征裕 自伝 夢の船』、シンコーミュージック・エンタテイメント、2020年

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