G.723

G.723は、国際電気通信連合（ITU-T）によって標準化された広帯域音声コーデックの一つであり、その規格はG.721適応的差分パルス符号変調（ADPCM）を拡張したものです。

技術的特徴

G.723コーデックは、主に2つのビットレートで動作するように設計されていました。具体的には、24キロビット毎秒（kbps）と40kbpsの2つの仕様が定義されていました。これにより、異なるネットワーク環境やアプリケーションのニーズに応じて、音声品質と帯域幅の利用効率を調整することが可能でした。高いビットレート設定では、より高品質な音声伝送が実現できますが、帯域幅の使用量も増加します。逆に低いビットレート設定では、帯域幅の消費を抑えつつ、音声品質はある程度維持されます。

G.721との関連性

G.723は、G.721コーデックの拡張として開発されました。G.721はADPCM技術をベースにしており、時間的に変化する音声信号の差分を量子化・符号化することで効率的にデータ量を圧縮します。G.723は、このADPCMの概念をさらに発展させ、より広帯域の音声信号に対応できるように設計されました。これにより、G.721よりも高音質な音声の符号化・復号化を可能にしました。

現在では利用されない理由

G.723は、その登場後、長らく音声通信分野で利用されてきましたが、より高性能な後継コーデックであるG.726が登場したことにより、次第に利用されなくなりました。G.726は、より効率的な符号化アルゴリズムを採用しており、同じビットレートでもG.723よりも高品質な音声伝送を実現できます。また、G.726は、複数のビットレートに対応しており、より幅広い用途で利用可能です。これらの理由から、現在ではG.723はほとんど利用されていません。

G.723.1との違い

重要な点として、G.723とG.723.1は、全く異なるコーデックであるということを認識しておく必要があります。G.723.1は、低ビットレートの音声符号化を目的として設計されたものであり、G.723とは異なる技術的アプローチと利用目的を持っています。そのため、G.723.1はG.723の後継というわけではありません。

関連技術と規格

G.723は、音声符号化技術の発展において重要な役割を果たしました。関連する技術や規格としては、以下のようなものがあります。

G.711：電話回線で一般的に使用されるPCM（パルス符号変調）コーデック。
コーデック：音声や映像などのデータを圧縮・復元するための技術。
* 音声符号化：音声データをデジタル化し、効率的に伝送・保存するための技術。

外部リンク

G.723の詳細については、ITU-Tの公式ウェブサイトで公開されているG.723のページを参照することができます。

これらの情報を総合すると、G.723は広帯域音声の符号化に貢献した重要なコーデックであり、現在ではG.726などの後継技術にその役割を譲ったものの、音声符号化技術の歴史において重要な位置を占めていることがわかります。

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