GNAT

GNAT（グナット）は、GCC（GNU Compiler Collection）の一部として提供されているAdaプログラミング言語用のコンパイラです。このコンパイラの特筆すべき点は、そのフロントエンド（ソースコードを解析し中間表現を生成する部分）やランタイムライブラリ自体もAda言語で記述されているという点です。

GNATという名称は、当初このコンパイラがAda言語で書かれたコードをC言語に変換するトランスレータとして開発されたことに由来します。そのため、当初は「GNU NYU Ada Translator」と名付けられました。この名称が示すように、GNATの開発はGNUプロジェクトとニューヨーク大学（NYU）が深く関わっています。

GNATプロジェクトは、Ada 9X（Ada 95として知られるAda言語の改訂版）の標準化プロセスを支援する目的で、1992年に米国空軍がニューヨーク大学にオープンソースのAdaコンパイラの開発を委託したことから始まりました。この契約では、開発されたソフトウェアのすべてがGNU General Public License（GPL）の下で公開されることが義務付けられていました。これにより、GNATはオープンソースソフトウェアとして広く利用可能になりました。

1994年になると、GNATの開発を継続し、商用サポートを提供する目的でAda Core Technologies社が設立されました。この時期に、GNATのフロントエンドはAda言語で再実装され、GCCの中間表現を生成するコンパイラへと進化しました。これにより、GNATはGCCのフレームワークに統合され、GCCがサポートする様々なプラットフォームでAdaプログラムをコンパイルできるようになりました。

GNATの最初の公式コンパイラ検証は1995年に完了しており、Adaコンパイラとしての品質が認められています。これは、Ada言語が要求する高い信頼性と安全性を確保するための重要なステップでした。

従来、GNATのソースコードはGCCのソースコードとは別にリリースされていましたが、2001年10月2日以降、GCCのCVSリポジトリ（バージョン管理システム）に統合されました。これにより、GNATの開発とGCCの開発がより密接になり、ユーザーは一つのリポジトリから最新のGNATとGCCの両方を入手できるようになりました。統合されたソースコードは、GNUの公式ftpサイトを通じてミラーリングされ、世界中のユーザーが利用できるようになっています。

GNATは、Ada言語を使用する開発者にとって重要なツールであり、そのオープンソース性とGCCへの統合により、多くのプラットフォームでAdaプログラムを開発し、実行することが可能になっています。また、Ada Core Technologies社による商用サポートも提供されており、企業レベルでの利用も促進されています。


外部リンク

Ada Core Technologies社
GNATバイナリリリース　–　（リンク切れ）

もう一度検索