Global File System

GFS (Global File System): Linuxクラスタのための共有ファイルシステム

GFSは、複数のLinuxマシンから同時にアクセス可能な共有ファイルシステムです。 一般的な分散ファイルシステムとは異なり、全てのノードが同一のストレージに直接アクセスする点が大きな特徴です。クライアント／サーバといった階層構造を持たず、各ノードは対等な関係にあります。ストレージへの接続には、ファイバーチャネル、iSCSI、AoEなどが使用されます。

GFSのアーキテクチャと特徴

GFSは、高い同時アクセス性能を重視した設計です。そのため、データの一貫性を保つためのロック機構が重要になります。単一ノードでの利用であればシンプルなロックマネージャで済みますが、クラスタ環境では、フェイルオーバーに対応した冗長性のあるロックマネージャ（例えばGULMや分散ロックマネージャ(DLM)）が必要です。 これらのロックマネージャは、複数のノードが同時に同じファイルにアクセスしようとした際に競合を回避し、データの整合性を保つ役割を果たします。 GFS自身はフリーソフトウェアであり、GNU General Public Licenseでライセンスされています。

開発の歴史と進化

GFSは1997年にミネソタ大学で開発が始まり、当初はSGIのIRIX上で動作していました。その後、開発の容易さからLinuxに移植され、オープンソースとして公開されました。 一時期、企業による商用化の試みもありましたが、開発者コミュニティによるフォーク（OpenGFS）を経て、最終的にはRed HatによってGPLライセンスの下で公開されることとなりました。

Red HatによるGFSのサポートは、バグ修正と安定性向上に重点が置かれ、その後継としてGFS2が開発されました。GFS2はLinuxカーネルに統合され、Red Hat Enterprise Linux (RHEL) の一部として広く利用されるようになりました。RHEL 5.2では評価目的でカーネルモジュールとして提供され、5.3で正式にカーネルパッケージに含まれました。 一方、元のGFSはRHEL 6以降ではサポートされなくなっています。 FedoraやCentOSといった他のLinuxディストリビューションでも、GFSは一定期間採用されていました。RHEL 5以降、RHEL Advanced PlatformではGFSのサポートが追加コスト無しで提供されています。

GFSのバージョンと機能

GFSのバージョンアップに伴い、様々な機能強化が行われました。主なバージョンと特徴は以下の通りです。

v1.0 (1996): SGI IRIX専用
v3.0: Linuxへの移植
v4: ジャーナリング機能の追加（データの整合性と回復能力の向上）
v5: 冗長性を持つロックマネージャの導入（可用性の向上）
v6.1 (2005): 分散ロックマネージャの導入（クラスタ環境でのスケーラビリティ向上）

GFSと関連ファイルシステム

GFSは、大規模クラスタ環境向けのファイルシステムとして設計されています。他のクラスタファイルシステムと比較すると、以下の点が挙げられます。

GPFS, ZFS, Lustre, GlusterFS, OCFS: これらは、GFSと同様にクラスタ環境で利用されるファイルシステムですが、それぞれアーキテクチャや機能が異なります。GFSは共有ストレージへの直接アクセスというシンプルなアプローチを採用している一方、他のシステムはより複雑な分散アーキテクチャを持つものもあります。 パフォーマンスやスケーラビリティ、機能面において、それぞれのシステムは得意不得意が異なります。

まとめ

GFSは、Linuxクラスタ環境における共有ファイルシステムとして、重要な役割を果たしました。そのシンプルで効率的なアーキテクチャは、多くのシステムに影響を与え、後のクラスタファイルシステムの開発にも貢献しています。GFS2への進化により、安定性と信頼性が向上し、現在でも多くの環境で活用されています。ただし、RHELにおけるサポート状況には注意が必要です。 GFSとその派生システムは、大規模データ処理や高性能コンピューティングにおいて、重要な基盤技術として位置づけられています。

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