Good-bye My Darling

岡林信康は、そのキャリアを通じて常に音楽的な探求を続けてきたアーティストです。フォークソングの旗手として登場しながらも、多様なジャンルを取り込み、表現の幅を広げてきました。彼が1979年を迎えた時点で、音楽活動の新たな展開として選択したのが、ビクターレコードへの移籍でした。そして、同年9月25日にリリースされたシングル『Good-bye My Darling』こそが、この新天地での第一歩を飾る記念碑的作品となったのです。

シングルのA面を飾るのは、表題曲である「Good-bye My Darling」です。この楽曲は、発表当時、ライオン株式会社の製品「オルタス」のテレビコマーシャルに起用されたことで、多くのリスナーの耳に届く機会を得ました。CMソングとしての役割も担ったこの曲は、作詞・作曲を岡林信康自身が手がけ、編曲は渡辺茂樹が担当しました。軽快かつ耳に残るメロディラインと、別れをテーマにした歌詞が印象的な楽曲です。シングル盤に収録されたバージョンは収録時間が2分55秒で、シングルとして広く流通するために制作されたアレンジが施されています。

「Good-bye My Darling」は、このシングルのリリースから程なくして発表された岡林信康のオリジナルアルバム『街はステキなカーニバル』にも収録されています。しかし、シングル盤に収められたバージョンとアルバムに収録されたバージョンは異なっており、これは本作の重要な特徴の一つです。一般的に、アルバムに先行してリリースされるシングルの場合、アルバムと同じバージョンが収録されることが多い中で、異なるバージョンを採用したことは、シングルとアルバムそれぞれに独自の意図があったことを示唆しています。シングルバージョンがよりキャッチーでCM向きのアレンジであったのに対し、アルバムバージョンでは楽曲の世界観をより深く掘り下げたアレンジが施されていた、といった聴き比べの楽しみ方ができるでしょう。

シングルのB面に収録されているのは「遠い朝」です。この楽曲もまた、作詞・作曲を岡林信康が、編曲を渡辺茂樹が手がけています。「Good-bye My Darling」のポップな雰囲気とは異なり、「遠い朝」はより内省的で、じっくりと聴かせるタイプの楽曲であったと推測されます。収録時間は4分46秒と、A面よりも長い尺が取られており、シングル盤の両面で岡林信康の表現の幅を示そうとした意図がうかがえます。別れを歌ったA面に対し、B面で描かれる「遠い朝」の情景は、リスナーに様々な感情を喚起させることでしょう。

『Good-bye My Darling』シングルは、1979年という時代の空気を反映しつつ、岡林信康というアーティストが自身の音楽性を柔軟に変化させながらも、確固たる世界観を持ち続けていたことを示す作品です。ビクター移籍第一弾として発表された本作は、その後の彼の音楽活動の方向性を占う上でも重要な意味を持っています。同年にリリースされたアルバム『街はステキなカーニバル』と共に、当時の岡林信康の音楽を知る上で欠かせない一枚と言えるでしょう。このシングルに関する詳細な情報やクレジットについては、Discogsのような音楽データベースサイトで参照することが可能です。1979年の日本の音楽シーンを語る上でも、本作は記憶にとどめておくべき存在です。

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