街はステキなカーニバル

街はステキなカーニバル

『街はステキなカーニバル』は、日本のミュージシャン、岡林信康によって1979年10月25日にリリースされたアルバムです。この作品は、彼がビクターエンタテインメント内のレーベル、インビテーションへ移籍して初めて発表したアルバムであり、同時に1970年代における最後のオリジナルアルバムという節目の位置づけとなっています。

制作の背景とコンセプトの変化

前作『セレナーデ』に続く作品として制作が開始された本作は、当初、ポール・アンカやニール・セダカといったアーティストを彷彿とさせる、より徹底した軽快なポップスアルバムを目指していました。しかし、長年にわたり岡林の活動を写真に収めてきたカメラマン、川仁忍氏の体調が悪化するという状況が、アルバムの方向性に大きな影響を与えます。川仁氏のために「君に捧げるラブ・ソング」というシリアスな楽曲を書くなど、個人的な状況が反映されるにつれて、当初の軽妙なコンセプトから変化を遂げ、単純なポップス路線では収まらない作品へと深化していきました。

岡林自身は、このアルバムについて「フォーク的な要素、ロック的な要素、いわゆるポップス、そして演歌のような叙情性まで、様々な要素が自然と溶け合ったのかもしれない」と語っています。制作当時は意識していなかった多様性が、後になって振り返るとこの作品の大きな特徴であると感じているようです。

ジャケット写真

アルバムのジャケット写真は、岡林信康を長年撮り続けてきた川仁忍氏が手掛けました。この写真は、彼のキャリアにおける最後の仕事の一つとなり、岡林と川仁氏の深い関係性を示す記念碑的なものとなっています。

収録曲

アルバムに収録された楽曲はすべて、岡林信康自身が作詞・作曲を手掛け、編曲は渡辺茂樹が担当しています。

Side A

1. Good-bye My Darling（アルバム・バージョン） (3:54)
このアルバムのために最初に完成した楽曲です。
2. モノクローム・シティ (2:56)
3. 摩天楼 (3:44)
4. 遠い朝 (4:48)
5. 君に捧げるラブソング (5:57)
体調を崩したカメラマン、川仁忍氏のために書かれた、個人的でシリアスな感情が込められた楽曲です。

Side B

1. 街はステキなカーニバル (3:29)
2. 血まみれ (4:47)
3. ロックン・ロールしてるかい!? (3:31)
4. 山辺に向いて (7:39)
東京を離れて5年間暮らした山村生活を総括するような、内省的な楽曲です。闘病中の川仁忍氏が、この曲は岡林にしか書けない、書くべき歌だと強く励まし、完成に至ったという背景を持っています。

ボーナス・トラック

2007年以降にリリースされたCD版などには、ボーナス・トラックとして以下の2曲が追加収録されています。

Good-bye My Darling（シングル・バージョン） (3:59)
Gの祈り (4:46)

レコーディング・メンバー

このアルバムの制作には、岡林信康を中心に、以下のミュージシャンが参加しています。

唄、ギター、ハーモニカ：岡林信康
キーボード、編曲：渡辺茂樹
SAIL BOAT (Courtesy of CBS SONY INC.):
ギター、スティール・ギター：谷口陽一
キーボード：渡辺茂樹
ベース：杉浦孝司
ドラムス：備瀬益男
* 新田一郎

『街はステキなカーニバル』は、岡林信康が新しいレーベルで迎えた70年代の終わりに、個人的な出来事や内面的な変化が投影され、当初の構想を超えた多様な音楽性が結実した作品として、彼のキャリアにおいても重要な位置を占めています。

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