H&K HK417

H&K HK417：7.62mm口径の高性能自動小銃

H&K HK417は、ドイツの銃器メーカー、ヘッケラー&コッホ（H&K）社が開発した7.62x51mm NATO弾を使用する自動小銃です。イラクやアフガニスタンでの対テロ作戦など、7.62mmライフルの有効性が再認識されたことを背景に、5.56mm NATO弾を使用するHK416（HKM4）の口径拡大版として開発されました。

開発の背景

21世紀初頭、中東地域での戦闘経験から、5.56mmアサルトライフルよりも遠距離での射撃能力や威力が高い7.62mmライフルの必要性が再評価されました。これを受け、H&K社はHK416をベースに、より強力な7.62mm弾に対応したHK417を開発しました。

HK417の特徴

HK417は、HK416と同様にショートストロークピストン式の作動機構を採用しており、信頼性が高く、過酷な環境下でも安定した動作が可能です。アッパーレシーバーとハンドガードにはピカティニーレールシステムが装備されており、各種光学機器やアクセサリーを容易に取り付けることができます。

また、冷間鍛造技術を用いた長寿命の銃身、高い保守性と耐塵性を持つ内部構造、泥水に浸した直後でも正常に作動する高い性能を誇ります。H&K社は、HK416と同等の10,000-15,000発までの耐久性を保証しています。

銃身長は12インチ、16インチ、20インチのバリエーションがあり、近接戦闘から狙撃まで幅広い用途に対応できます。ハンドガードはフリーフローティング式で、銃身に接触しない構造となっており、射撃精度を向上させています。

弾倉は、G36と同様に半透明のプラスチック製で、残弾数を確認できます。

豊富なオプション

HK417は、HK416と同様に豊富なオプションが用意されており、AG-C/GLMアドオン式擲弾発射器の装着も可能です。また、H&K HK21用の50連発ドラム弾倉を使用することで、軽機関銃や分隊支援火器としての運用も可能です。

アメリカでの生産

アメリカ軍への採用が国産品でないという理由で阻害されることや、国際的な武器輸出入規制の手続きが販路拡大の障害となっていたことから、H&K社はアメリカ市場向けには現地生産を行う方針に切り替えました。2007年にウィルコックス・インダストリーズと提携し、アメリカ国内での生産を開始しました。

各種モデルと派生型

HK417には、様々なバリエーションと派生型が存在します。

HK417（試作型）: 初期の試作モデルで、ボルトホールドオープン機能がなく、G3小銃用の弾倉を流用していました。
HK417（二次試作型）: ボルトホールドオープン機能が追加され、弾倉が半透明の合成樹脂製に変更されました。
HK417（先行量産/初期生産型）: 二次試作型の試験結果を受けて生産されたモデルで、12インチ、16インチ、20インチの銃身長のモデルがあります。
HK417（後期生産型）: 銃身長が16.5インチとなり、セレクターレバーとチャージングハンドルロックボタンがアンビ仕様に統一されました。
HK417D: H&Kアメリカ現地法人で生産・販売されているモデルです。
HK417A2: 2013年よりラインナップされている改良型で、G28 DMRの開発で得られた知見が反映されています。ガスポートの精度向上や規制子の位置変更、アンビ仕様の操作系などが特徴です。
G27P: ドイツ連邦軍がHK417を制式採用した際の名称で、16.5インチ銃身型がマークスマンライフルとして運用されています。
MR308/MR762: 民間向けモデルで、セミオートのみに制限されています。MR308はヨーロッパ市場向け、MR762はアメリカ市場向けです。
DMR762: MR308を基に開発されたG28 DMRの試作型で、競技用の高精度銃身が用いられています。
MR762A1: 銃身長が16.5インチに変更されたモデルです。フロントサイトが固定式になり、ハンドガードの固定ネジが一般規格に変更されました。
MR308A3: HK417A2に準拠した最新モデルで、完全なアンビ仕様の操作系が特徴です。
MR762A1 L.R.P: MR762A1の外観をDMR762様にしたモデルで、高精度銃身や各種アクセサリーが付属します。
MR762A1-SD: MRS対応のハンドガードとモジュラー式サプレッサーを備えたモデルです。
G27: ドイツ連邦軍向けのマークスマンライフルですが、遠距離射撃性能が不十分として不採用となりました。
G28 DMR: G27の不採用を受けて開発されたマークスマンライフルで、ドイツ連邦軍が採用しています。

各国での運用

HK417は、ドイツ連邦軍をはじめ、多くの国の軍隊や警察組織の特殊部隊で採用されています。当初は、7.62mm自動小銃は旧式化しているという認識から、その採用は限定的でしたが、高性能なモデルであることから徐々に採用国が増加しています。

アメリカ軍では、マークスマンライフルとしてM14を近代化改修したものが使用されており、HK417は正式には採用されていません。しかし、G28Eがアメリカ陸軍に採用され、M110A1として制式採用される予定です。

日本での運用

日本においても、陸上自衛隊が技術援助の名目でHK417を導入したと推測されています。

まとめ

H&K HK417は、その高い性能と信頼性から、多くの国で採用されている自動小銃です。今後も、様々な派生モデルの開発や運用実績の積み重ねによって、その評価はさらに高まっていくと考えられます。

参考文献

月刊『コンバットマガジン』
月刊『アームズマガジン』
床井雅美：著『オールカラー 最新軍用銃事典』
H&K社公式ウェブサイト
HKPRO.COM
WORLD GUNS
MEDIAGUN DATABASE

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