H&K P11

HK P11: ヘッケラー&コッホ社製の水中拳銃

歴史

HK P11は、ヘッケラー&コッホが開発した水中銃で、特に水中環境での使用を目的としています。その開発は1960年代に遡ります。当時、アメリカ海軍は水中での自己防衛のためのピストルが必要とされ、1970年代初頭にはMk1水中防衛銃が採用されました。一方、ソビエト連邦もSPP-1という水中拳銃を開発し、西ドイツもその動きに続き、独自の水中銃の開発を始めました。

ヘッケラー&コッホはこのプロジェクトを受け持ち、1976年にHK P11は開発を完了し、正式に採用されました。アメリカ海軍はMk1の採用があったにもかかわらず、より軽量で操作が容易なP11も導入することとなりました。そのため、水中の特殊任務における装備としての地位を確立しました。

ただし、P11は非常に機密性が高い製品であり、具体的な仕様や存在は公開されることがありませんでした。しかし、1980年代にイタリア軍が演習中に誤ってこの銃を展示した際、一般の知識としてP11の存在が広まりました。

設計

HK P11は前モデルのMk1とデザインが似ていますが、いくつかの改良が施されています。床井(2020)によると、P11の開発にあたり、Mk1を手がけたAAI社やアメリカ海軍とのコンタクトがあったのではないかと考えられています。

この水中銃は、複数のバレルを持つペッパーボックスピストルのスタイルを採用しており、5本の銃身にそれぞれ弾薬を装填します。海水での腐食を防ぐために、ポリマー素材が部材に多く使用されており、非常に耐久性のある設計がされています。また、銃把の中には電気発火用の9ボルト乾電池が2個収納されています。5本の銃身はユニット化されており、簡単に取り外して交換が可能です。

弾薬は口径7.62mm、全長36mmで、炭化タングステン製の特殊弾です。通常の弾とは異なり、ライフル弾に近い形状をしており、水中での威力を最大限に引き出す設計です。発射方法はピストン・プリンシプル式で、電気を使って発火します。5発の弾薬を発射後は、専用のバレルユニットを交換することで再装填します。この装填作業は工場で行わなければならないため手間がかかりますが、信頼性の高い武器として評価されています。

使用国

HK P11は多くの国々で利用されています。具体的にはデンマーク、フランス、ドイツの海軍精鋭部隊、イスラエル、イタリア海軍のCOMSUBIN、オランダ、ノルウェー、イギリスの特殊舟艇部隊、アメリカ合衆国の特殊作戦部隊がその例です。特にアメリカでは200丁が特殊作戦部隊のメンバーに配布されています。

このようにHK P11は、特殊任務を行う部隊にとって欠かせない水中用の武器となっています。其の独自の設計と、秘密保持がなされた歴史により、この武器は特殊な地位を確立しています。

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