特殊舟艇部隊

イギリス海兵隊特殊部隊SBS：海と陸の精鋭部隊

イギリス海兵隊特殊部隊SBS（Special Boat Service）は、その名のとおり水上・沿岸部での特殊作戦を専門とする精鋭部隊です。ドーセット州プール海軍基地を本拠とし、海兵隊所属という特性を活かし、水際での偵察、対テロ活動などを主任務としています。しかし、その活動範囲は多岐に渡り、ジャングル、砂漠、寒冷地など、あらゆる環境下での作戦遂行能力を有しています。そのため、陸軍特殊空挺部隊SASとの任務重複も少なくありません。

近年では、戦争以外の軍事作戦（MOOTW）にも積極的に関与しています。平和維持活動、麻薬取締、要人警護、さらには核施設警備といった、多様な任務を担う存在へと進化を遂げています。

SBS隊員となるには、まず厳しいコマンド課程を修了し、海兵隊員となる必要があります。その後、さらに狭き門であるSBS選抜コースを突破しなければなりません。隊員たちは、特に水という過酷な環境下での活動経験から、SASよりも優れた部隊であると自負していると言われています。アメリカ陸軍デルタフォースやアメリカ海軍DEVGRUのような関係性と言えるでしょう。

部隊モットーは、かつては「Not By Strength By Guile（力よりも知恵で）」でしたが、現在は「By strength and guile（力と知恵を）」へと変更されています。この変更は、力と知略の両方を重視するSBSの姿勢を反映していると言えるでしょう。

歴史：戦火を潜り抜け、進化を続ける部隊

SBSの起源は、第二次世界大戦中の1940年に遡ります。ブリティッシュ・コマンドスの隊員であったロジャー・コートニー少佐率いる小規模なボート部隊がその始まりです。スコットランドの複合訓練センターで鍛え上げられたこの部隊は幾つかの作戦で成功を収めましたが、大きな損害も被り、一時的にSASに吸収される時期もありました。

ほぼ同時期の1942年7月6日には、英国海兵隊帆船パトロール分遣隊（RMBPD）が設立されました。ポーツマスを拠点に活動し、34名からなるこの分遣隊は、ドイツ軍に対する海上作戦で実績を残しました。

1943年4月、ジョージ・ジェリコー少佐の指揮下でSBSは再編成され、RMBPDと共にドイツ軍相手に数々の戦果を挙げました。しかし、戦後の軍縮により、SBSは一度解体されました。

しかし、RMBPDをルーツとする訓練部隊を経て、戦後SBSは再結成されました。ボルネオ、オマーン、北アイルランド、フォークランド、湾岸戦争など、世界各地で数々の作戦に従事。2001年のアフガニスタン紛争では米軍特殊部隊と共に反タリバン勢力への支援を行い、その後もイラク戦争、リビア内戦など、現代の紛争にも積極的に関与しています。近年では、海賊対処などの対テロ活動でもその存在感を示しています。2018年にはテムズ川河口、2020年にはイギリス海峡で発生したシージャック事件において、迅速な対応で人質救出に成功しています。また、2022年にはウクライナにおけるボリス・ジョンソン首相の警護にも関与したとされています。

組織：多様な能力を備えた精鋭部隊

SBSは、複数の部隊から構成されています。

C中隊: 水泳作戦やカヌー作戦などを担当
M中隊: 海洋対テロ作戦やボート作戦などを担当
S中隊: 小規模揚陸作戦や小型潜水艇作戦などを担当
X中隊: SASとSBSからの志願者で構成される精鋭部隊(2004年新設)
* SBS予備兵 (SBSR): 予備役

これらの部隊はそれぞれ高度な専門性を持ち、状況に応じて連携することで、複雑な作戦を成功に導きます。

SBSと世界の特殊部隊

オランダ海軍海兵隊には、SBS第7小隊（別名 水陸両用偵察小隊）が存在し、戦時にはイギリス海軍海兵隊のSBSの一部として活動します。また、日本の海上自衛隊特別警備隊（SBU）は創設時にSBSから教官を招へいし、訓練を行いました。これらの連携は、国際的なテロ対策や安全保障において重要な役割を果たしています。

SBSが登場する作品

SBSは、数々の書籍、映画、ゲームにも登場し、その存在感を示しています。現実の活動同様に、フィクションの世界でもその活躍は大きな注目を集めています。

書籍: ダン・キャムセル『SBS特殊部隊員』など

映画: 『生き残った二人』、『コードネーム:ストラットン』など

ビデオゲーム: 『Battlefield V』など

結語

SBSは、その歴史と実績から、世界でも屈指の特殊部隊としてその名を馳せています。海と陸の両方に精通した高い能力、そして常に進化を続けるその姿勢は、今後も世界の平和と安全に貢献していくことでしょう。

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