H-25 (航空機)

H-25ミュール（HUPレトリバー）

H-25ミュール（HUPレトリバー）は、1940年代にアメリカ合衆国のパイアセッキ・ヘリコプター社で開発された単発星形エンジンを搭載したタンデムローター式の汎用ヘリコプターです。この機体はアメリカ陸軍やアメリカ海軍をはじめ、カナダ海軍やフランス海軍でも広く運用されました。また、初の自動操縦装置を備えた量産型ヘリコプターでもあります。

設計と開発

1945年、アメリカ海軍は航空母艦や戦艦などから発艦可能な小型汎用/救難ヘリコプターを求め、業界に設計を依頼しました。このプロジェクトにはパイアセッキ社やシコルスキー社が参加し競争の末、パイアセッキ社が開発したXJHP-1（社内名PV-14）が選ばれ、量産型のHUP-1として生産が始まりました。

HUP-1は、直径11mのメインローターを持ち、艦内に収納できる設計になっています。この特徴により、空母の昇降機に搭載することが可能でした。エンジンはコンチネンタル R-975-34星形エンジンを使用し、525 hpの出力を持っていましたが、その後のモデルでは550 hpを出力できるR-975-42またはR-975-46Aエンジンに変更されています。捜索・救難任務では、副操縦座席を折り畳んだ状態で181 kgの重さを持ち上げることができるウィンチが使用されました。その際、高Gに耐える能力を証明し、意図せずにループ機動を成功させた初のヘリコプターとなりました。

運用の歴史

1949年2月、最初にアメリカ海軍に引き渡された32機のHUP-1は、すぐにより強力なエンジンを搭載したHUP-2（社内名PV-18）へと移行されました。HUP-2は自動操縦装置を備えた初の量産モデルであり、対潜任務型のHUP-2Sにはソナーなどの装備が追加されました。アメリカ海軍はHUP-2を使って「Raydist」という無人機の制御試験を実施し、指定地点からのホバリングに成功しました。

アメリカ陸軍では、改良されたHUP-2をH-25Aという名称で採用しましたが、数機はHUP-3としてアメリカ海軍に引き渡されました。H-25Aは武装化試験も行い、NAKA 38mmロケット弾ポッドや7.62mm機銃を搭載する案もありました。1954年にはカナダ海軍がH-25Aを改造し、CCGSラブラドールに搭載して多様な任務に応じて運用しました。

最終的に、6年間で339機が生産され、余剰機は民間機として登録されました。フランス海軍にも数機が移譲されており、各国でその性能が評価されました。

バリエーション

• - XHJP-1: 試作機で、525 hpのエンジンを搭載。
• - HUP-1: 初の量産型、32機製造。
• - HUP-2: 改良型、550 hpのエンジン。
• - HUP-2S: 対潜型、12機製造。
• - HUP-3: アメリカ海軍仕様に変更された型。
• - H-25A: アメリカ陸軍向けに改修された型、70機が配備。
• - UH-25B: 1962年に改称されたHUP-2。
• - UH-25C: 1962年に改称されたHUP-3。

運用国

このヘリコプターはアメリカ合衆国、カナダ、フランスなどで広く運用されました。

現存機

現在でもいくつかの機体が博物館に展示されており、アメリカ陸軍航空博物館やカナダ航空宇宙博物館などで見ることができます。

性能・主要諸元（HUP-2）

• - 乗員: 2名
• - 搭載量: 4名
• - 全長: 17.35 m
• - 発動機: コンチネンタル R-975-46A星型エンジン、550 hp
• - 最大離陸重量: 2767 kg

このヘリコプターは、様々な用途に対応できる汎用性を持ち、特に救難や捜索任務においてもその能力を発揮しました。

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