星型エンジン

星型エンジンの概要

星型エンジン（ほしがたエンジン）は、シリンダーが放射状に配置される構造を持つレシプロエンジンです。このエンジンは、20世紀半ばまで航空機において主に用いられたガソリンエンジンの一種であり、特に空冷の星型気筒配置が人気でした。航空機において、軽量でコンパクトな設計が求められる中、星型エンジンはその特性から多くの機種に採用されました。

構造と動作原理

星型エンジンの中心にはクランクシャフトがあり、それを取り囲むようにシリンダーが放射状に並びます。英語では「Radial engine」と呼ばれ、他の言語でも「星」を意味する言葉を用いて命名されています。一つ一つのシリンダーは独立しており、マスターロッドとサブロッドを使ったコネクティングロッドで接続されています。この構造により、エンジンはスムーズに動作しますが、シリンダーごとにストローク長や死点タイミングのずれが発生するため、適切な調整が必要です。

この調整は主にシリンダーの長さを変更するか、マスターロッドへの取り付け穴をずらすことで行なわれます。点火時期についても、気筒ごとの不均一を避けるための工夫が必要です。エンジンの中心に部品が集まる構造のため、モーターカノンを搭載できず、単発機では機銃を機軸から離れた位置に設置する必要があります。

特徴

クランクシャフトの短さ

星型エンジンのクランクシャフトは、単気筒エンジンと同じ長さで、製造時の精度を求めることが困難な当時においては、優れた製造技術と容易な組み立てが利点となっていました。特に20世紀初頭の技術レベルでは、直列エンジンやV型エンジンよりも製造が容易でした。

冷却方式

各シリンダーは機体の前面に配置されているため、冷却風が直接当たりやすく、空冷が一般的でした。しかし、冷却効果が均一でないため、水冷の方式も徐々に導入されました。ただし、星型エンジンの需要が減少する前に水冷技術が普及することはありませんでした。

振動とその対策

星型エンジンは全方位対称な形状を有しているため、通常はスムーズな回転が期待されます。しかし、各シリンダーの動きが異なるため、振動が生じることがあります。これを軽減するために、キャブレター方式やダンパーの装備が進められました。

歴史

星型エンジンの初期の開発は、アメリカのサミュエル・ラングレーと助手のチャールズ・マンリーによるもので、1901年には5気筒のマンリー・バルザーエンジンが制作されました。ライト兄弟のエンジンよりも高性能でしたが、飛行実験では成功に至りませんでした。

特に第二次世界大戦の時期には、日本やドイツ、アメリカなど、多くの国で星型エンジンが航空機に搭載されました。日本の中島製寿や栄、BMW製のエンジンなどが代表例で、これらは多くの戦闘機に用いられました。また、運用環境の厳しさから、寒冷地でのエンジン始動性の確保が大きな課題となりました。

具体的な例

具体的なモデルとして、中島製の星型エンジンやプラット・アンド・ホイットニー製のエンジンが挙げられます。これらのエンジンは、当時の航空機設計において重要な役割を果たしました。星型エンジンの設計と開発は、航空機技術の発展に大きく寄与したと言えます。

参考文献

• - 富塚清編 『航空発動機』1943年の出版物

星型エンジンは、その特異な構造から多くの利点があると同時に、特有の問題点も抱えていたため、様々な工夫と改良が行われてきました。

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