HAKUTO-R ミッション1

HAKUTO-R ミッション1 (M1)

HAKUTO-R ミッション1は、日本の航空宇宙企業ispaceが展開する初の月着陸ミッションであり、同社の月探査プログラムの第一歩と位置付けられています。このミッションでは、アラブ首長国連邦 (UAE) のMBRSCによって開発された月面ローバー「ラシッド」を月面に運搬しますが、ispace自身のローバーは搭載されていません。組み立て作業はドイツで行われ、打ち上げは2022年12月11日にスペースXのファルコン9ロケットを使用して行われました。ロケットはアメリカのフロリダ州、ケープカナベラル宇宙軍施設から発射されました。

ミッション概要

HAKUTO-R M1は、2021年にドイツで組み立てが始まり、打ち上げ後は約3〜4ヶ月以内に月面着陸を目指した計画です。ミッションの管制は東京の日本橋にあるispaceのミッションコントロールセンターから行われます。このミッションには、NASAの月探査機であるルナー・フラッシュライトも相乗りとして打ち上げられました。

搭載貨物

M1によって運ばれる予定の貨物には、以下のような先進的な装置が含まれています：

• - 固体電池：日本特殊陶業が開発した全固体電池で、月面での実証実験を行います。
• - 月面探査ローバー「ラシッド」：MBRSCが開発した4輪の探査ローバーです。
• - 変形型月面ロボット「SORA-Q」：JAXAがタカラトミーらと共同開発中のロボットで、月面着陸後に走行形状に変形します。
• - 人工知能のフライトコンピューター：カナダのMCSS社が開発したもので、ローバーが撮影した画像の地形を認識します。
• - 360度カメラ：カナダのCanadensys社製のカメラです。
• - HAKUTO応援関連商品：クラウドファンディングで得た支援者名の刻まれたプレートや、サカナクションの楽曲なども搭載されています。

運用と軌道変更

M1は打ち上げ後、47分でロケットから分離しました。初期の通信不安定な状況を乗り越え、約5時間後にはispaceとの交信が確立されました。12月14日にはカメラが撮影した初の画像が公開され、12月15日には推進系の初稼働も成功しました。その後、宇宙での運用を続け、1月12日には運用期間が1ヶ月に達し、地球から137.6万kmの距離に移動しました。これは民間資本の宇宙機として過去最も遠くを飛行した記録となりました。

着陸とその後

2023年4月26日、M1は月面着陸のための態勢に入りますが、通信が途切れた後、着陸が成功したか確認することはできませんでした。ispaceの会見では、最終段階での降下速度が異常があったことが明らかにされ、科学的分析の結果、推進剤を使い切りハードランディングに至ったと推測されています。その後、NASAはルナー・リコネサンス・オービターによって撮影された影を確認し、着陸地点周辺での動きがあったことを発表しました。

月保険の導入

HAKUTO-R M1は、三井住友海上火災保険が提供する「月保険」の最初の事例として注目されました。この保険は、着陸機から地球との通信が確立されるまでの損害を補償するもので、民間機の月面着陸時に保険がかけられた例は初めてです。

今後のミッションに向けて得られた知見は、さらに進化を続けるispaceの取り組みに反映されていくでしょう。

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