HITAC

HITAC（ハイタック）

HITAC（ハイタック）は、日立製作所が開発した独自のコンピュータシリーズの商標で、特に“Hitachi Transistor Automatic Computer”という意味合いを持ちます。1950年代から1970年代にかけて、HITACブランドは様々な用途に特化した多様なコンピュータモデルを提供し、日本のコンピュータ技術の発展に大きく寄与しました。

技術の黎明期

日立製作所では1951年からアナログコンピュータの研究を開始し、1956年にはデジタルコンピュータの開発に着手しました。その中で、1957年にはパラメトロンを基にしたプロトタイプ「HIPAC MK-1」を開発。これは送電線の張力計算などに利用され、続いて「HIPAC 101」や「HIPAC 103」といった製品化に繋がります。

HIPACシリーズの成功を経て、日立はトランジスタ式コンピュータの研究を進め、1959年には「HITAC 301」として製品化しました。このコンピュータは、日本電子工業振興協会に納入され、以後も様々なコンピュータが開発されました。特に「HITAC 501」は、初の制御用コンピュータとして重要な役割を果たします。

メインフレームと技術提携

1961年に日立はRCAと技術提携を結び、1962年には国産化された「HITAC 3010」を開発しました。この機種は神奈川県庁に納入され、続く「HITAC 4010」はオンラインリアルタイム処理に利用されました。この時期、日立はRCAとの協力を通じて技術的革新を遂げ、後にIBMのシステムに対抗するための準備を進めます。

超高性能電子計算機プロジェクト

1967年には通産省主導で超高性能電子計算機プロジェクトが始まり、これによりページング方式による仮想記憶やマルチプロセッサ、LSIの高速化が実現しました。これらの成果は後のHITAC-8800やHITAC-8700に活かされ、特に8800シリーズは日本の計算機センターで使用されました。

HITAC Mシリーズの発展

1971年には、日立と富士通が提携しアーキテクチャの共通化を進め、「Mシリーズ」を展開しました。このシリーズはIBM互換路線を取り、性能を向上させることで市場での競争力を確保しました。1980年代には、HITAC M-600シリーズが登場し、最大4プロセッサ、LSI化を実現し、さらなる可用性向上に寄与しました。特にHITAC M-200Hは当時世界最大、最高速の性能を誇りました。

スーパーコンピュータの開発

日立は1978年からスーパーコンピュータの開発に進出し、HITAC S 810をはじめとする一連のシステムが導入されました。これらは当時の計算性能を大幅に上回り、様々な研究機関に納入されていきました。特に、HITAC S 820では3GFLOPSの性能を持ち、多くの計算を迅速に処理することができます。

HITACの終息

2022年には日立のウェブサイト上で「技術計算向けサーバ」のページが閉鎖され、HITACブランドによるコンピュータの製造が終息を迎えました。長い歴史の中で日本のコンピュータ産業に多大な影響を与えたHITACは、今もなお多くの技術者にとって重要な価値を持ち続けています。これからの技術革新においても、HITACで培われた経験が活かされていくことでしょう。

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