HLB値

HLB値（親水性親油性バランス）について

HLB値（Hydrophile-Lipophile Balance value、親水性親油性バランス）とは、界面活性剤が水と油に対して持つ親和性の度合いを示す指標です。界面活性剤は、水と油のように混ざり合わない物質同士を混ぜ合わせる（乳化）ために用いられますが、その効果はHLB値によって大きく左右されます。

HLB値とは

HLB値は、0から20までの数値で表され、値が小さいほど親油性が高く、大きいほど親水性が高いことを意味します。界面活性剤の分子構造における親水性部分と親油性部分のバランスによってHLB値が決まり、この値がエマルションの生成や安定性に影響を与えます。

HLB値の算出方法

HLB値は、いくつかの算出方法が提案されています。

グリフィンによる方法

ウィリアム・グリフィンは、以下の式を用いてHLB値を算出する方法を提唱しました。

多価アルコールと脂肪酸のエステル（Span系）の場合：

`HLB = 20 (1 - S / A)`

ここで、Sはエステルの鹸化価、Aは脂肪酸の酸価です。

分子中にポリオキシエチレン鎖を含む場合（Tween系）の場合：

`HLB = E / 5`

ここで、Eはポリオキシエチレン鎖（酸化エチレン）の重量分率です。

親水基としてポリオキシエチレン鎖のみを含む場合（Peregal系、Igepal系）の場合：

`HLB = 0.2 E`

デイビスによる方法

デイビスは、分子の親水基と親油基の基数を用いてHLB値を算出する方法を提案しました。

`HLB = 7 + Σ(親水基の基数) - Σ(親油基の基数)`

川上による方法

川上八十太は、親水基と親油基の分子量を用いて、以下の実験式でHLB値を算出する方法を示しました。

`HLB = 20 (Mw / (Mw + Mo))`

ここで、Mwは親水基の分子量、Moは親油基の分子量です。

HLB値と界面活性剤の性質

HLB値を知ることで、界面活性剤の特性を予測し、適切な用途を選択することができます。

1.5–3：消泡剤
3.5–6：W/Oエマルションの乳化剤（水相が油相に分散）
7–9：湿潤剤
8–18：O/Wエマルションの乳化剤（油相が水相に分散）
13–15：洗剤
15–18：可溶化剤

このように、HLB値は界面活性剤の選択や、エマルションの種類を決定する上で非常に重要な指標となります。

まとめ

HLB値は、界面活性剤の親水性と親油性のバランスを表す数値であり、エマルションの生成や安定性に大きく影響します。適切なHLB値を持つ界面活性剤を選択することで、目的とするエマルションを効率的に作成することができます。各種算出方法を理解し、界面活性剤の特性を把握することが重要です。

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