HOME (山崎まさよしのアルバム)

山崎まさよし『HOME』

アルバム概要

シンガーソングライター、山崎まさよしが発表したキャリア通算2作目のオリジナルアルバムが『HOME』です。1997年5月21日に、当時のポリドール・レコードよりリリースされました。前年にリリースされたデビューアルバム『アレルギーの特効薬』、そしてその間に挟まれたミニアルバム『ステレオ』に続く作品として、彼の初期音楽活動の基盤を築く上で重要な位置を占めています。

作品解説

本作『HOME』は、リリース当時のインタビューで山崎まさよし自身が語ったように、「内向的な」感情や日常の機微を捉えた歌詞が多く見られるのが特徴です。しかし、その内省的な表現と並行して、パブリックなヒット曲やライブでの熱狂を巻き起こす人気曲が共存しており、アーティストとしての幅広さを示す作品となっています。

アルバム収録曲の中でも、特に広く知られているのは「One more time, One more chance」と「セロリ」でしょう。「One more time, One more chance」は、山崎まさよしが主演を務めた映画『月とキャベツ』の主題歌として書き下ろされ、情感豊かなメロディと歌詞が多くのリスナーの心に響きました。この楽曲は、後年、映画『秒速5センチメートル』の主題歌としても使用され、時代や作品を超えて愛される彼の代表曲となっています。一方の「セロリ」は、1997年に国民的アイドルグループSMAPがカバーしたことで、世代を超えて親しまれることになりました。本作には、シングルとは異なるアルバムバージョンが収められています。

また、ライブでのパフォーマンスを重視する山崎まさよしにとって、『HOME』はライブに欠かせない楽曲を数多く生み出したアルバムでもあります。中でも「Fat Mama」は、そのグルーヴとエネルギーで会場を熱狂させるライブ定番曲の筆頭であり、様々なライブアルバムに異なるバージョンが収録されています。さらに、「ヤサ男の夢」や「昼休み」といった楽曲も、ライブではメドレー形式で披露されることが多く、ファンにはおなじみの存在です。この他にも、テレビ番組やCMのタイアップとなった「アドレナリン」、後の元ちとせによるカバーでも知られる「名前のない鳥」などが収録されています。

ユニークな楽曲としては、「スクリーミン '97」が挙げられます。これは本作にのみ収録されているオリジナルアルバム唯一のインストゥルメンタル曲であり、タイトルの通り山崎まさよし本人の叫び声が含まれています。2005年の野外ライブイベント「Augusta Camp」では、この曲の2005年バージョンが披露されるなど、時を経てもその存在感は失われていません。

本作のCDジャケットは、ファンからの人気も高く、ファンクラブ会員が選ぶ「好きなジャケット写真」のアルバム部門で第5位にランクインしました。リリースから10年後の2007年12月19日には、ボックス仕様のアナログ盤としても再リリースされており、その根強い人気がうかがえます。

アルバムタイトルの『HOME』には、興味深いエピソードが隠されています。当初、プロデューサーの一人であり、山崎まさよしが所属するオフィスオーガスタの社長でもある森川欣信氏から提案されたタイトル案は「福耳」でした。しかし、山崎本人の反対により、現在の『HOME』というタイトルに決定したと伝えられています。この「福耳」という名称は、後にオフィスオーガスタ所属アーティストによるスペシャルユニットの名前として受け継がれ、現在に至るまで活動を続けています。

参加ミュージシャン

本作のレコーディングには、山崎まさよし（ボーカル、コーラス、ブルースハープ、各種ギター、カズー）の他、多くのミュージシャンが参加しています。ドラムスに江川ゲンタ、山木秀夫、小田原豊、ベースに沢田浩史、中村キタロー、美久月千晴、ギターに稲葉政裕、西川進、キーボードにDr.kyOn、中村キタロー、柿崎洋一郎、森俊之といった錚々たるメンバーが集結。ストリングスは加藤JOEグループが担当し、楽曲に深みを与えています。

関連作品

『HOME』の収録曲は、その後の山崎まさよしのキャリアを語る上で欠かせないものとなり、多くのベストアルバムやライブアルバムに収録されています。例えば、ベストアルバム『BLUE PERIOD』には「アドレナリン」「セロリ」「One more time, One more chance」が、ライブアルバム『ONE KNIGHT STANDS』や『WITH STRINGS』には「Fat mama」「セロリ」「名前のない鳥」「昼休み」「One more time, One more chance」「ヤサ男の夢」のライブバージョンが、また『Transit Time』には「ベンジャミン」が収録されています。さらに、初心者向けのベストアルバム『The Road to YAMAZAKI 〜the BEST for beginners〜』にも代表曲が多数選曲されるなど、本作が山崎まさよしのキャリアにおいていかに重要な楽曲群を生み出したアルバムであるかが分かります。

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