HOSONO HOUSE

HOSONO HOUSE

細野晴臣のデビューアルバム『HOSONO HOUSE』は、1973年5月25日にリリースされました。細野の音楽キャリアの第一歩を示す作品であり、はっぴいえんど解散時期から数ヶ月後に制作がスタートしました。このアルバムは、細野と彼の音楽仲間である鈴木茂、松任谷正隆、林立夫の4人によって結成された“キャラメル・ママ”のスタート地点でもあります。彼らは音楽における新たな冒険を求め、互いに深い関係を持つメンバーたちでした。

録音は、細野の新居である埼玉県狭山市の自宅で行われました。この自宅は、アメリカ村と呼ばれ、70年代のヒッピー文化に影響を受けていました。周囲にはミュージシャンやアーティストが住む環境が整っており、細野は当時のシーンの中心人物として創作に没頭しました。このレコーディングは、アメリカのアーティストのホーム・レコーディングからインスピレーションを得ており、当時新たに登場したフリーのエンジニアによって行われました。

特に興味深いのは、自宅でのレコーディングが生音を重視していた点です。細野はアンプからの直接録音ではなく、狭い部屋での演奏を録音することで独自のサウンドを生み出しました。この方法により、音の回り込みが特徴的な音色を作り上げ、アルバム全体に温かみのある雰囲気をもたらしました。レコーディングは、毎日午後5時間、約1ヶ月にわたって行われ、プロモーターの麻田浩もその集中した雰囲気を印象深く思い出しています。

アルバムのタイトル『HOSONO HOUSE』は、細野が自らの生活空間を中心に音楽を作るという意志を示しており、後のインタビューで細野は、狭山での生活が非常に幻想的であったことを振り返りながら、音楽の世界にどっぶりと浸かっていたと述べています。彼は、ヒッピー文化やカントリー音楽の流行を感じ取りながら、周囲のミュージシャンたちとの共同生活の中で徐々に現実に戻る必要性を感じていました。

アートワークも特徴的で、オリジナルLPはシンプルなデザインが施され、野上眞宏によるアート・ディレクションが光ります。細野の顔のアップが表紙にあしらわれ、地味な外観から裏側にピンクが使われるデザイン案もありましたが、最終的には黒基調が選ばれました。

『HOSONO HOUSE』には、個性的な収録曲が並んでいます。オープニング曲「ろっか・ばい・まい・べいびい」はアコースティックギターのシンプルな弾き語りで、西岡恭蔵や吉田美奈子によるカヴァーも知られています。続く「僕は一寸」では、音楽シーンに身を置くことへの思いが込められ、「CHOO CHOO ガタゴト」では、はっぴいえんどの楽隊について触れています。また、「冬越え」や「恋は桃色」など多様な楽曲が収められ、多くのアーティストによってもカヴァーされています。

このアルバムは、細野晴臣の音楽的な旅の始まりを示す宝石のような存在であり、その後の音楽シーンに大きな影響を与えることとなります。音楽ファンのみならず、多くのアーティストたちに愛され続ける『HOSONO HOUSE』は、細野自身のルーツと創造性の集大成として、今もなお色あせることなく輝き続けています。

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