HP-28 シリーズ

HP-28 シリーズ：革新的な関数電卓

HP-28シリーズは、ヒューレット・パッカード（HP）が1986年から1992年にかけて製造・販売した関数電卓です。特に、数式を記号的に処理できる機能を初めて搭載した電卓として知られています。このシリーズは、独自のメニュー駆動型RPL（Reverse Polish LISP）プログラミング言語インタフェースを採用しており、後のHP 48シリーズへと発展しました。

デザインと特徴

HP-28シリーズの電卓は、180度開閉可能なクラムシェル型ケースを特徴としています。左側のフリップにはアルファベット順に配置された英字キーボード、右側には通常の関数電卓のキーが配置されています。ディスプレイには、137×32ドットのマトリックス液晶が使用されており、通常は23桁×4行の情報（3行のスタック/コマンド行と1行のソフトキーラベル行）を表示します。

HP-28シリーズには、HP-28CとHP-28Sの2つのモデルが存在します。

HP-28C：2KBのRAMを搭載し、数式処理システム（CAS）を初めて搭載した電卓です。CPUにはSaturn（640kHz）が使用されています。
HP-28S：32KBのRAMを搭載し、変数、関数、プログラムを管理するためのディレクトリシステムを備えています。CPUにはSaturnをベースにしたカスタムチップLewis（1MHz）が搭載されています。

欠点

HP-28シリーズの欠点として、入出力端子が装備されていない点が挙げられます。そのため、数式やプログラムは電卓本体のキーパッドからしか入力できず、外部メディアへのバックアップもできませんでした。

また、クラムシェル型ケースの設計にも問題点がありました。電池ケース内で単5形乾電池を支えるバネが強すぎること、電池蓋の端が薄く、開閉時に圧力がかかりやすいことが原因で、電池蓋が破損しやすいという問題がありました。

RPLプログラミング

HP-28シリーズでは、RPL（Reverse Polish LISP）と呼ばれるプログラミング言語を使用できます。RPLは非常に強力な言語であり、APLのシミュレーションも可能です。

プログラム例：階乗の計算

以下は、0から253までの整数の階乗を計算するRPLプログラムの例です。

rpl
<< → N << 1 1 N FOR I I NEXT >> >>


解説

1. `<<`：プログラムの開始
2. `→ N`：ローカル変数Nを定義し、スタックから値を取り出してNに代入
3. `<<`：ローカル変数のスコープ開始
4. `1`：スタックに1を置数（計算結果の初期値）
5. `1`：スタックに1を置数（ループ変数Iの開始値）
6. `N`：スタックにNの値を置数（ループ変数Iの終了値）
7. `FOR I`：Iをループ変数として、開始値から終了値まで繰り返す
8. `I`：スタックにループ変数Iの値を置数
9. ``：スタックから2つの値を取り出して乗算し、結果をスタックに置数
10. `NEXT`：ループ変数Iを1増やし、終了値未満ならFORに戻る
11. `>>`：ローカル変数のスコープ終了
12. `>>`：プログラムの終了

実行例

上記のプログラムを`FACT`という名前で保存し、`6 FACT`と入力すると、結果として`720`が表示されます。

まとめ

HP-28シリーズは、革新的な機能とRPLプログラミング言語により、関数電卓の歴史において重要な位置を占めています。その後の電卓開発に大きな影響を与えただけでなく、現在でも多くのファンに支持されています。

もう一度検索