Harvard Mark I

ハーバード マーク ワン

ハーバード マーク ワン（Harvard Mark I）、またはIBMのAutomatic Sequence Controlled Calculator（ASCC）は、アメリカにおける初の電気機械式計算機として歴史に名を刻んでいます。1944年2月にハワード・エイケンによって開発され、IBMによって製造されたこの計算機は、元々アメリカ海軍の用途として設計され、その後ハーバード大学に渡りました。正式に大学に引き渡されたのは同年の8月7日です。

設計と構成

ハーバード マーク ワンは、76万5000個の電気機械部品から構成され、数百キロメートルに及ぶ電線が使用されています。サイズは全長16メートル、高さ2.4メートル、奥行き約60センチメートルで、重さは約4.5トンです。その基本的な計算部は、15.5メートルの軸で接続されており、4kWの電動モーターによって動かされます。本体のデザインはノーマン・ベル・ゲデスによるものでしたが、エイケンはその美しさが資源の無駄遣いであると考えていました。エイケンによると、このデザインにかける資金があれば、さらに新たな計算装置を作成できたとされます。

動作のメカニズム

この計算機は、24個のスイッチが60セット組み合わさっており、データを手動で入力する仕組みです。最大で23桁の十進数を72個保存でき、加算や減算は1秒間に3回行えます。一方で乗算には6秒、除算には15.3秒、対数や三角関数の計算には1分以上を要します。プログラムは24チャンネルの連続穴テープから読み出され、物理的にループを形成することで実行されます。このようなデータと命令の分離は、後にハーバード・アーキテクチャとして知られることになります。

命令フォーマットとプログラミング

アキュムレータやスイッチ、入出力に関する各レジスタは、8チャンネルの3つのフィールドに分かれた形でデータを扱います。これによって、プログラム内の操作を二進法で表現したインデックス番号を使って処理することができます。この命令形式は、ハーバード マーク ワンの基本的な動作を支える重要な要素となっています。

エイケンとIBMの関係

ハワード・エイケンは、マーク ワンの発明を自身の手によるものとしてメディアに発信しましたが、実際にはIBMの技術者たちも設計に関与していました。そのため、エイケンの発表は議論を引き起こし、IBMのトーマス・J・ワトソンは強い反発を示しました。この後、エイケンはIBMの支援を受けずに次世代機の開発を進める決断をします。

後継機の開発

ハーバード マーク ワンの後継機として、Mark II（1947年または1948年）、Mark III/ADEC（1949年9月）、Mark IV（1952年）といった機種が登場しました。Mark IIはエイケンにより改良されたもので、引き続き電気機械式のリレーを使用していましたが、Mark IIIとMark IVは、真空管や半導体といった電子部品を取り入れたものでした。これに伴い、記憶装置も進化し、Mark IVは磁気コアメモリを使用しています。

現在、ハーバード マーク ワン自体は既に解体されてしまいましたが、その一部はハーバード大学のキャボット・サイエンス・センターに保存されており、計算機の歴史における重要な遺産として注目されています。

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