Harvard Mark III

ハーバード マーク スリーについて

ハーバード マーク スリー（Harvard Mark III）、別名ADEC（Aiken Dahlgren Electronic Calculator）は、初期のコンピュータの一つであり、アメリカ海軍のためにハーバード大学で開発されました。プロジェクトを指導したのは、著名な計算機科学者ハワード・エイケンでした。このコンピュータは、1949年9月に完成し、1950年3月にはバージニア州ダールグレンの海軍実験場に搬入されました。正式に稼働を始めたのは1951年からでした。

技術的背景

ハーバード マーク スリーは、16ビットのワードを基本としており、5,000本の真空管と1,500個の結晶ダイオードが使用されています。このコンピュータの総重量は10ショートトン（約9.1トン）に達し、非常に大規模な装置であることがわかります。また、磁気ドラムメモリの容量は4,350ワードであり、かなりのデータを処理する能力を持っていました。加算処理には、メモリへのアクセスを含めて4,400マイクロ秒を要し、乗算処理では13,200マイクロ秒かかりました。エイケンはこのマシンを当時の世界最速の電子式コンピュータと称賛しました。

その構造には、9個の磁気ドラムが含まれており、それぞれは4,000命令の処理能力を持つプログラム内蔵型コンピュータです。全体のアクセス時間は、4,400マイクロ秒となっていました。演算ユニットは、追加の2つのドラムにアクセスできる仕組みになっており、そこには150ワードの定数と200ワードの変数が保存されていました。これらのドラムもアクセスに同様の時間を要しました。

このコンピュータの大きな特長は、データと命令を分けて管理するハーバード・アーキテクチャという方式を採用している点です。残りの6つのドラムは、合計で4,000ワードのデータを収容することができましたが、演算ユニットはこれらのドラムに直接アクセスすることはできませんでした。データは、これらのドラムと演算ユニットとの間で、電気機械的リレーを介して転送されました。このため、データへのアクセスは80,000マイクロ秒と長めに設定されていましたが、1回のアクセスで20ワードを転送できるため、ある程度の効率性は保たれていました。

さらなる情報

ハーバード マーク スリーは、単に技術的な面を超えて当時の計算機技術の発展に寄与しました。それは、次世代のコンピュータが採用する基盤となる技術を確立する重要な一歩であり、その後の発展へとつながる道を開いたのです。エイケンの指導のもと、ハーバード マーク スリーは、あらゆる分野における計算能力の重要性を再認識させる存在となりました。この大きな機械は、今でも多くの研究者の興味を引き続けています。

参考文献

• - Michael R. Williams著『A History of Computing Technology』（1997年）
• - ハーバード大学計算センターのスタッフによる1952年の文書『Description of a Magnetic Drum Calculator』

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