Hip City

Hip City (麻倉未稀のアルバム)

『Hip City』（ヒップ・シティ）は、日本の歌手、麻倉未稀が1983年6月21日にリリースした通算4枚目のオリジナル・アルバムです。発売はCRYSTAL BIRDレーベルより、キングレコードから行われました。

概要と音楽性

本作のサウンドプロデュースは、当時の気鋭アレンジャーである清水信之が一手に手掛けています。帯に記された「プロデューサー清水信之の感性と新しい仲間達との出逢いで、よりポップにシェイプアップされたニュー・アルバム。」という言葉が示すように、清水信之ならではの洗練されたサウンドメイキングと、新たな音楽仲間とのコラボレーションによって、アルバム全体は以前にも増してポップで都会的な装いをまとっています。

特に注目すべきは、本作に収録された全楽曲の作詞を麻倉未稀自身が手掛けている点です。彼女は作詞にあたり、テレビ番組の企画で訪れたニューカレドニアでの経験から得た、海と夏の鮮やかなイメージを膨らませたと語っています。これにより、従来のアルバムでしばしば見られたアダルトな雰囲気から一歩踏み出し、麻倉未稀自身の等身大の姿や感性がストレートに表現された作品となりました。

アルバムには、大貫妙子、大村憲司、加藤和彦といった日本の音楽シーンを代表するクリエイターたちが楽曲を提供しており、コーラスにはEPOも参加するなど、豪華な顔ぶれが揃っています。これらの要素が組み合わさることで、本作は本格的なシティポップ・アルバムとして評価されています。

収録曲からは、「マジカル サマー」がシングルA面として、カップリングの「トロピカーナ パラダイス」（アルバム収録曲）とともに本作と同日に発売されました。

制作エピソード

全曲の作詞を麻倉未稀自身が担当することになった背景には、興味深いエピソードがあります。本人の意向というよりも、所属事務所とレコード会社の方針を受けたものでした。当初、麻倉は歌唱に専念したいという気持ちが強く、「歌うことに集中したい」と希望を伝えたものの、スタッフからの勧めもあり、それは受け入れられず却下されてしまったといいます。結果として、やや不本意ながらも作詞を手掛けることになったという経緯があり、麻倉自身、「自分から作詞をしたいと申し出た記憶はありません」と後年述懐しています。しかし、この経験が結果的に彼女の新たな表現の幅を広げることにも繋がったと言えるでしょう。

リリースと再評価

『Hip City』は、1983年6月21日の発売と同時に初めてCD化されました。しかし、その後長らく再発売されることはありませんでした。ファンにとっては入手困難な状況が続いていましたが、最初のリリースから実に31年の時を経た2014年8月27日、音楽ライターの金澤寿和氏の企画・監修のもと、70年代から80年代にかけてのシティ・ポップやJ-AORに焦点を当てた人気シリーズ「Light Mellow」の一枚として、リマスタリングが施され、ようやく再発売が実現しました。この際の規格品番はKICS-3093です。

さらに、2023年2月3日に開始された音楽配信版には、従来のアルバムには未収録であった「シルバー・レイン」がボーナストラックとして追加されています。

収録曲

LP・カセット (全曲作詞: 麻倉未稀 / 全曲編曲: 清水信之)
Side A
1. Hip City (作曲: 高瀬政彦)
2. トロピカーナ パラダイス (作曲: 高瀬政彦) - シングル「マジカル サマー」B面曲。
3. タイム スリップ (作曲: 大村憲司)
4. Forum (作曲: 清水信之)
Side B
1. フィジカル レディー (作曲: 高瀬政彦)
2. 海の見える街 (作曲: 高瀬政彦)
3. Love Trip (作曲: 大貫妙子)
4. マジカル サマー (作曲: 加藤和彦) - 本作と同日発売の5thシングルA面曲。
5. Someday (作曲: 大貫妙子)
CD (LP・カセットと同内容)
音楽配信 (上記9曲に加え、未収録曲を追加)
1. Hip City
...
9. Someday
10. シルバー・レイン

主な参加ミュージシャン

本作の制作には、以下のミュージシャンが参加しました。

Keyboards, Guitar, Bass, Percussion: 清水信之
Drums: 村上秀一
Guitar: 青山徹
Bass: 富倉安生
Percussion: ペッカー
Horn Section (Trumpet): 数原晋グループ
Horn Section (Trombone): 新井英治グループ
Strings Section: 大野グループ
Chorus: 大貫妙子, EPO

『Hip City』は、麻倉未稀のアーティストとしての新たな一面を開花させた作品であり、日本のシティポップを語る上でも重要な位置を占める一枚と言えるでしょう。

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