Home Bound

浜田省吾『Home Bound』解説

『Home Bound』（ホーム・バウンド）は、1980年10月21日にリリースされた浜田省吾の6枚目のアルバムです。このアルバムは、彼のキャリアにおいて重要なターニングポイントとなりました。

制作背景

1970年代、浜田省吾は制作サイドの意向により、職業作家的な楽曲制作を行っていました。しかし、それは彼の理想とするサウンドとはかけ離れたものであり、葛藤を抱えていました。1979年にシングル「風を感じて」がヒットしたことで、彼の意向も受け入れられるようになり、アメリカでのレコーディングが実現しました。憧れのロックサウンドを手に入れた彼は、このアルバムを「第二のデビュー・アルバム」と語っています。

アルバムタイトル

アルバムタイトルは、サイモン&ガーファンクルの「Homeward Bound」からインスパイアされています。「原点回帰」の意味を込めつつ、ディレクターの須藤晃の発案により、『Home Bound』という造語が用いられました。

レコーディング

本作は浜田省吾にとって初の海外レコーディングであり、ロサンゼルスでレコーディングが行われました。スティーヴ・ルカサー（TOTO）、ニッキー・ホプキンス、ジェフ・バクスターといった、現地の一流ミュージシャンが参加し、アレンジは水谷公生が担当しました。当初は、ジャクソン・ブラウンのバックバンド「ザ・セクション」とのレコーディングを希望していましたが、メンバーのツアー参加により実現せず、代わりにこの豪華なラインナップが用意されました。楽曲のメロディは日本で制作されましたが、歌詞はすべてアメリカで書かれており、現地の風景やレコーディングの雰囲気が色濃く反映されています。

アルバムアートワーク

現在も浜田省吾のアルバムジャケットを手掛ける田島照久が、本作で初めて起用されました。

制作エピソード

スティーヴ・ルカサーの参加は、当初半信半疑でしたが、レコーディング当日、「TOTO」と大きく書かれたツアートラックでスタジオに現れたルカサーを見て、一同は興奮したそうです。町支寛二によると、当時のルカサーは若干傲慢な面もあったようですが、水谷と町支は彼のプレイに感銘を受けていました。ニッキー・ホプキンスは浜田の楽曲を非常に気に入り、「一緒にツアーをやろう」と誘いました。最初は社交辞令かと思われましたが、その後も何度も誘われ、最終日には連絡先を渡されたそうです。しかし、ホプキンスは1994年に亡くなり、ツアーは実現しませんでした。

記録

1996年時点での累計売上は305,734枚（アナログ盤・CD・カセットの合計）を記録しています。

収録曲

終りなき疾走
東京
丘の上の愛
あばずれセブンティーン
傷心
今夜こそ
反抗期
ガラスの部屋
明日なき世代
家路

楽曲解説

終りなき疾走: アルバムのオープニングを飾るロックナンバー。迷いを断ち切るような力強い楽曲で、現在でもライブで人気が高いです。
東京: ロングツアー「ON THE ROAD 2001」では、歌詞が一部変更されました。
丘の上の愛: ロサンゼルスの高級住宅街を見て書かれた楽曲です。
あばずれセブンティーン: 矢沢永吉や甲斐バンドの前座時代に作られた楽曲で、歌詞が一部異なります。元々は山口百恵に提供される予定でしたが、採用されませんでした。その後、甲斐よしひろがこの曲を気に入り、1978年にカバーしています。
傷心: 参加ミュージシャンに好評だった楽曲で、アメリカにはないメロディが評価されました。発売当時、札幌の有線放送で1位を獲得したそうです。水谷公生はこの楽曲を「音楽の気持ちよさと曲の切なさ、そして彼の声が素晴らしい」と評しています。
家路: 「ON THE ROAD 2001」で歌詞が変更され、ベストアルバム『The Best of Shogo Hamada vol.2』に収録されました。ファンからの人気も高く、ファンクラブの人気投票で1位を獲得しています。

『Home Bound』は、浜田省吾が新たな音楽性を確立し、その後のキャリアを大きく飛躍させるきっかけとなった重要な作品です。

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