HuC62

HuC62システム：ハドソンのゲーム機を支えたチップセット

1987年7月、株式会社ハドソンはゲーム機などの用途向けに設計されたCPUと周辺LSIのチップセット「HuC62」を発表しました。正式名称はC62システムであり、日本電気ホームエレクトロニクスから発売されたPCエンジンやPC-FXといったゲーム機に搭載され、その心臓部として活躍しました。製造は主にセイコーエプソンが行っていました。

興味深いことに、HuC62という名称は、ハドソン社長であった工藤裕司氏の趣味である蒸気機関車、通称「シロクニ」と呼ばれたC62形蒸気機関車に由来しています。この命名には、工藤氏の趣味と企業風土が深く関わっていると言われています。（詳細はハドソン社の歴史資料を参照）

HuC62システムは、複数の専門性の高いLSIチップで構成されており、それぞれのチップが高度な処理を分担することで、当時のゲーム機としては高度なグラフィック表示やサウンドを実現していました。主なチップは以下の通りです。

HuC62システム チップセット一覧

HuC6201 (外部メモリ制御チップ): 天の声2などにも搭載された、外部メモリを制御するチップです。シャープ製。
HuC6202 (VPC - Video Priority Controller): PCエンジン スーパーグラフィックスに搭載。2つのVDC (Video Display Controller)から送られてくるビデオデータ信号を合成し、VCE (Video Color Encoder)に出力する役割を担っていました。どちらのVDCのデータを使うかCPUからの命令で制御する機能を持っていました。
HuC6230 (音源チップ): HuC6280の音源部にADPCMを追加したチップです。
HuC6260 (VCE - Video Color Encoder): VDCからのビデオデータ出力ポートから出力されたデータと、VCE内蔵のカラーパレットを照合してD/A変換を行い、アナログRGB信号と映像色信号を出力します。さらに、VDCとVPCにドットクロック信号、水平同期信号、垂直同期信号を供給する役割も担っていました。同期信号発生回路内蔵、RGB8段階計512色発色、RGBカラー帯域7MHz、カラーパレットはデータバスからREAD/WRITE可能、CMOS製造プロセス、電源電圧+5V、80ピンQFPといった仕様です。
HuC6261: ビデオ管理機能を持つチップ。HuC6260の後継チップにあたります。
HuC6270 (VDC - Video Display Controller): VCEからのドットクロック信号に同調し、スプライトと背景を合成して9ビットビデオデータとして出力します。出力データはパレット情報、カラーインデックス情報、スプライト背景情報で構成され、それ自体は色情報ではありません。外部同期可能な同期信号発生回路（PCエンジンでは外部同期）、バックグラウンドカラーのパターンサイズは8×8ドット、色指定256色中16色、スプライトサイズは16×16ドット、色指定256色中16色、デジタルカラー映像信号9ビット並列TTLコンパチブル、DMA機能（CPU-VRAM間、VRAM-VRAM間、VDC内のSATB (Sprite Attribute Table Buffer) - VRAM間の転送）、CPU接続用2ビットアドレスバス、CPU接続用16ビットデータバス、VRAM接続用16ビットアドレスバス、VRAM接続用16ビットデータバス、VRAM制御機能、CMOS製造プロセス、電源電圧+5V、80ピンQFPという仕様です。
HuC6271: Motion JPEGデコーダ
HuC6272: メモリコントローラ
HuC6273 (3D表示用チップ): PC-FXGAに搭載された3D表示用チップ。クボタコンプスとの共同開発です。
HuC6280 (カスタム6502CPU): 6502CPUをベースに独自に命令を変更・拡張したCPUです。波形メモリ音源も内蔵していました。CPU部は65C02を元に命令を変更・拡張し、ADC命令にBCD機能を追加、ストア命令をHuC6270へのストアに変更するなど改良が加えられています。音源部はメロディ6チャンネルまたはメロディ4チャンネル+ノイズ2音、音量設定は5ビット対数変換方式、メイン音量制御レジスタ内蔵、1周期32アドレス波形メモリ方式、LFO内蔵、CMOS製造プロセス、電源電圧+5V、80ピンQFPです。

これらのチップが連携することで、PCエンジンやPC-FXは当時の技術水準を超えたグラフィックやサウンドを実現することができました。HuC62システムは、日本のゲーム機の歴史において重要な役割を果たしたと言えるでしょう。

参考資料：「PC Engineユーザー開発システム でべろスターターキット アセンブラ編」 徳間書店インターメディア（株）発行、1996

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