IBM 5100

IBM 5100ポータブル・コンピューター

IBM 5100 Portable Computerは、1975年6月にIBMが市場に初めて投入したポータブル型のデスクトップコンピュータです。これは、1973年に発表されたSCAMP（Special Computer APL Machine Portable）というプロトタイプPCの進化形であり、特に画期的な小型化を実現しました。IBM 5100は1982年に販売を終了し、その後の発展形としてIBM 5110やIBM 5120が存在しますが、IBM PCとの関連性はありません。

概要

IBM 5100は、高度な16ビットCPUモジュールPALM（Put All Logic in Microcode）を搭載しています。このCPUモジュールはメンテナンスマニュアルで「コントローラ」と呼ばれ、64KBのメモリを直接操作できます。また、IBM 5100には実行可能なROM（Executable ROS）が含まれ、ユーザーが使用するAPL/BASICインタプリタはPALMが管理する専用のアドレス空間に保存されます。

ポータブル・コンピューターの先駆け

IBM 5100は、現代的な一体型PCとして約25kgの重さで、スーツケースのようなサイズにキーボード、5インチCRTディスプレイ、テープドライブ、最大64KBのRAMを内蔵しています。これは、従来のメインフレームと比較して驚異的な小型化を達成しており、ユーザーが容易に運搬できるようになっています。このような技術的成果は、当時の他のコンピュータには見られないものでした。

外部モニター機能

IBM 5100は、バックパネルのBNCコネクタを通じて外部のビデオモニターを接続することができます。このモニタは、内蔵モニタとは異なり、文字の色や背景を選ぶスイッチの影響を受けずに表示されますが、外部モニタと内部の表示設定が使い分けられるという特性があります。

コミュニケーションアダプタ

1975年9月にIBMは、IBM 5100の通信機能を拡張するためのIBM 5100 Communications Adapterを発表しました。このアダプタを使うことで、メインフレームと連携し、リモートシステムとデータ通信が可能になります。具体的には、IBM 5100をIBM 2741 Communications Terminalとして機能させることもできました。

モデルバリエーション

IBM 5100は、異なるRAMの容量（16KB、32KB、48KB、64KB）を持つ12種類のモデルが展開されていました。その販売価格は米国でおよそ8,975ドルから1万9975ドル、日本では340万円から800万円と、当時のコンピュータ市場で高価な部類に入りました。

プログラミング言語の多様性

IBM 5100は、APLまたはBASICのいずれかのプログラミング言語を選択して利用できる点が特徴です。APLは当時、メインフレームで使用されることが多く、同時にBASICが使える環境は非常に限られていました。IBM 5100は、その使いやすさとシンプルさから、多くのユーザーに受け入れられました。

添付ソフトウェア

IBMは、数学や統計的手法、財務分析に関連する1,000以上の対話的ルーチンを含むProblem-Solver Librariesというソフトウェアを付属させて販売しました。これにより、IBM 5100を使ったさまざまな計算が可能になりました。

エミュレータ機能

IBM 5100のアーキテクチャには、旧式の巨大コンピュータ向けプログラムをエミュレートできる機能が搭載されています。これはプログラムを改修する手間を省きます。実際にSystem/370やSystem/3向けのインタプリタが組み込まれており、さまざまな機能をエミュレートすることができます。

評価と影響

日本では1976年に最初のIBM 5100が導入されましたが、IBM 5110の登場により販売は苦戦しました。APLの複雑さから普及は限定的でしたが、その後のIBM 5110ではBASICが標準言語に採用され、より多くのユーザーに受け入れられるようになりました。IBM 5100は、個人向けコンピュータの黎明期における重要な製品として、今なお歴史に名を刻んでいます。

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