テープドライブ

テープドライブとは

テープドライブは、磁気テープを媒体としてデータの記録・再生を行う外部記憶装置です。主にデータやコンピュータシステムにおけるバックアップやアーカイブ用途で利用されています。ここでは、データ/コンピュータ用のドライブについて解説します。

概要

テープドライブは、主に以下の要素で構成されています。

磁気ヘッド：データの記録・再生を行う。
テープ搬送機構：テープを一定速度で移動させるための機械部品。
制御回路：上記機構を制御するための電子回路。

これらの要素が協調して動作することで、テープへのデータの記録やテープからのデータの読み出しが実現します。テープはテンション制御されながら搬送され、磁気ヘッドと接触して記録再生が行われます。また、ホストコンピュータとの通信インターフェース（SAS, ファイバーチャネルなど）や、一時的にデータを格納するキャッシュメモリを搭載している場合があります。

データのエラー訂正機能や暗号化機能が搭載されているものもあり、技術革新によって記録密度や転送速度は向上し続けています。

アクセス方式はシーケンシャルアクセスであるため、データのバックアップや長期保存（アーカイブ）に適しており、特に大容量データのバックアップを安価に済ませたい場合に有効です。テープドライブ単体での利用も可能ですが、大規模なデータ管理においては、データカートリッジを自動で交換するテープライブラリに搭載して利用されることが一般的です。

磁気テープのデータカートリッジを記録媒体として使用し、テープドライブを用いてデータを保管する装置やシステム全体を「テープストレージ」と呼びます。

種類

テープドライブは、記録方式、巻き取りハブの有無、価格帯などによって分類されます。

記録方式による分類

リニア・サーペンタイン方式：テープの長手方向に沿った直線状のトラックにデータを記録する方式です。複数の磁気ヘッドで同時にデータの書き込み/読み出しを行うことで高速なデータ転送を実現します。
ヘリカル・スキャン方式：テープに対して斜めにトラックを記録する方式です。より高い記録密度を実現できます。

巻き取りハブの有無による分類

テープカートリッジは、テープを巻き付ける回転軸（リール）を1つまたは2つ持っています。

シングルリールカートリッジ：リールが1つの場合、ドライブ側に巻き取りハブが必要となり、ローディング時の動作がやや複雑になります。しかし、カートリッジをコンパクトにできるため、大量のカートリッジを扱う場合にスペース効率を高めることができます。
ダブルリールカートリッジ：リールが2つの場合、ドライブ側の機構が簡素化できます。

価格帯による分類

一般的に、テープドライブはミッドレンジとエンタープライズのクラスに分けられます。エンタープライズクラスは、より大容量、高速なデータ転送、高い信頼性（低いエラーレート）といった特徴を備えています。

特徴・比較

HDDやフラッシュメモリと比較したテープドライブの主な特徴は以下の通りです。

長所

高いシーケンシャルアクセス性能：連続したデータの読み書きに優れています。
メディアの低コスト：容量あたりの単価が低く、大量のデータを低コストで保存できます。
高い可搬性：メディアを持ち運びやすく、遠隔地へのデータ送付が容易です。
データの復元可能性：ドライブが破損しても、メディアが無事であればデータの復元が可能です。

短所

低いランダムアクセス性能：データの検索や一部データの抽出には時間がかかります。
イニシャルコスト：特に小容量の場合、ドライブの価格が高く、初期費用が大きくなる場合があります。
定期的なメンテナンス：ヘッドクリーニングテープなどを使った定期的なメンテナンスが必要です。

テープドライブはランダムアクセス性能が低いため、HDDなどを介さずに直接テープにデータを書き込むことは稀です。バックアップ方式としては、Disk-to-Tape(D2T)やDisk-to-Disk-to-Tape（D2D2T）が用いられます。

アーカイブでは、ディスクとテープ間のファイル移動を自動化する階層型ストレージ管理が用いられます。

かつてのテープドライブはブロックごとに読み書きするために頻繁にテープを停止させていましたが、現在主流のテープストリーマーでは、テープを停止させずに連続した読み書きが可能です。

テープは通常、ファイルシステムのようなディレクトリ構造やファイル名を保持しません。しかし、LTO規格の第5世代（LTO-5）以降では、リニアテープファイルシステム（LTFS）が導入され、テープ自体にデータの目録を持たせることで、あたかもテープ内にディレクトリ構造があるかのように見せることが可能になりました。

テープメディア

テープメディアには、リニア・テープ・オープン（LTO）やIBM 3592などの規格があります。

リニア・テープ・オープン (LTO)：リニア・サーペンタイン方式を採用したオープン規格で、Ultriumと呼ばれる規格が主流です。導入コストは高いものの、メディアは安価です。
デジタル・データ・ストレージ (DDS)：デジタル・オーディオ・テープ（DAT）の技術をデータ用に流用したものです。導入コストは安価ですが、メディアは比較的高価です。

テープオートローダー/ライブラリ

テープドライブは単体でも利用できますが、大規模なデータ管理では、テープの出し入れを自動化するオートローダーやテープライブラリに搭載して利用されることが多いです。これにより、人手による作業を減らし、データの取り戻し時間短縮、誤ったデータカートリッジの挿入による上書きのリスクを低減できます。

コンピュータからの操作

Linux環境でテープドライブを操作するためのコマンドは以下の通りです。

`mt, mtx`：テープの巻き戻しや特定の位置への移動など、テープドライブの制御を行います。
`tar`：テープにデータを書き込む際に使用します。
`dd`：パーティションのイメージをテープに書き込む際に使用します。
`dump, restore`：ファイルシステムのイメージのアーカイブを作成・復元するために使用します。

脚注・参考

関連項目
バックアップ
アーカイブ (コンピュータ)
磁気テープ
テープライブラリ
Linear Tape-Open
IBM 3592
レプリケーション
ミラーリング、ファイル同期
冗長化
可用性
mt (UNIX)

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